北原 白秋(きたはら はくしゅう)②
1885~1942年 福岡県出身。 詩人、童謡作家、歌人。
白秋は、自由詩、短歌、長歌、詩文 (散文詩)、童謡、民謡、など、さまざまな形式を駆使した。
童謡歌詞は誰もが一度は聞いた詩が多い。(雨、雨降り、ゆりかごのうた、砂山、からたちの花、この道、ペチカ、待ちぼうけ)など
ここでは、短歌のみの紹介です。
蒼天を見て驚かぬ賢しびと見ておどろけやいにしへのごと 『雀の卵』
足曳の山の猟男が火縄銃取りて出で向ふ冬は来にけり
鶯やまれに梓の下枝に傍目すれども鳴く音しめらず 『白南風』
現しくもいたもかなしきこの浅夜月にふたつの星潜り入る
月面をゑぐりてくらき色見れば裏ゆく星のありと思へなくに
耳いたむ妻とこもりて夜はふかし物のこまかにはじく雨あり
蹴爪に岩角をつかむ鷹一羽その下つ瀬ぞ青に渦巻く 『夢殿』
折ふしに冬木見えくる眼先もたちまち暗し虚しかりけり 『黒檜』
黒き檜の沈静にして現しけき、花をさまりて後にこそ観め
秋の蚊の耳もとちかくつぶやくにまたとりいでて蟵を吊らしむ 『牡丹の木』
内隠るふかき牡丹のありやうは花ちり方に観きとつたへよ
雲海のいただきの峰くだり来し少女一人に家揺りとよむ
何ならず黒き眼鏡にみなぎるは早鞆の瀬のたぎつ渦潮
行く水の目にとどまらぬ青水沫鶺鴒の尾は触れにたりけり 『渓流唱』
世を挙げて心傲ると歳久し天地の譴怒いただきにけり
碓氷嶺の南おもてとなりにけりくだりつつ思ふ春のふかきを 『海阪』
コメント