【武川 忠一】『9選』 知っておきたい古典~現代短歌!

雪

武川 忠一 (むかわ ちゅういち)

1919年~2012年 長野県出身。 歌人。

1940年(昭和15年)、早稲田大学専門部に入学。1943年、早稲田大学文学部国文科に編入学。窪田空穂・窪田章一 郎に師事。「まひる野」を経て「音」を創刊。近・現代短歌の研究・評論も多数ある。

第一歌集『氷湖ひょうこ』で自己の原点とも言う べき作品世界を築いた。

武川 忠一 歌集

1959年 『氷湖』 新星書房

1971年 『窓冷』 新星書房

1975年 『青釉』 角川書店

1981年 『秋照』 不識書院

1989年 『地層』 短歌新聞社

1992年 『緑稜』 不識書院

1996年 『翔影』 雁書館

武川 忠一 短歌

放射能に肌ただれしが死者なしと彼ら人間のことを伝うる 『氷湖』

ゆずらざるわが狭量を吹きてゆく氷湖の風は雪巻き上げて  

廊下這う着物の裾は乱しつつ誰にもこの母をみられたくなし  

あるときは襤褸の心縫わんとしき襤褸の心さらされていよ 『窓冷』

たまさかに舞いくる雪の夕日かげ家跡にきて遊べ父母 『秋照』

冷えこごりやがて凍りしうみのこと思想のごとし冴え冴えとして

対いいるもの見えて来よ百の窓ビルの窓黒きまなこが並ぶ  

ひっそりと自壊してゆく石というこの物体の白き月光 『緑稜』

老いし鯉うすき緋の色泳がせて遊びごころのありやあらずや 『翔影』

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