【吉井 勇】『23選』 知っておきたい古典~現代短歌!

キクイモ

キクイモ

吉井 勇 (よしい いさむ)

1886年~1960年 東京生まれ。大正期~昭和期の歌人、劇作家、小説家。

早稲田大学中退。1905年、与謝野鉄幹の東京新詩社に参加。「明星」の門をくぐり、恋愛相聞の歌を寄せて注目されていた。1909年、文芸雑誌「スバ ル」を創刊。

歓楽の巷での遊楽や、恋愛の情感を平易な抒情に歌い上げ、約50年間詠い続けた。 

吉井 勇 歌集

1910年 『酒ほがひ』 昂発行所

1913年 『恋人』 たちばなや

1917年 『祇園双紙』 新潮社

1927年 『悪の華』 宝文館

1944年 『玄冬』 創元社

1946年 『流離抄』 創元社

吉井 勇 短歌

あら海のやみにひらめくのふか腹女はらをんなの腹に似るとわらふや 『酒ほがひ』

少女言ふこの人なりき酒甕さかがめに凭りて眠るを常なりしひと 

海風かいふうは君がからだに吹き入りぬこの夜抱かばいかに涼しき  

かにかくに祇園はこひしるときも枕の下を水のながるる  

君がため瀟湘湖南せうしゃうこなんの少女らはわれと遊ばずなりにけるかな  

唇は木の実のごとく甘ければあしたにたうベタにたうぶる  

この夜また身に染むことを君にきく沈丁花にも似たるたをやめ  

覚めし我酔ひれし我また今日も相争ひてねむりかねつも 

白き手がつと現はれて蝋燭のしんを切るこそなまめかしけれ

わが胸のつづみのひびきたうたらりたうたうたらり酔へば楽しき

菊芋

菊芋

魔の猫よ汝があなうらに触るる時など媚薬をば思はしむるや 『水荘記』

このごろは夜毎よごと銀座をおとづれぬ青柳もよし鋪石しきいしもよし 『東京紅燈集』

すてばちの心となりぬ隅田川すみだがは水のながれを君とながめて  

この額ただ拳銃ピストルの銃口を当つるにふさふところなるべき 『夜の心』

井上ゐのうへ馬泥坊うまどろぼうのおもひでがなどかくわれの涙さそふや 『悪の華』

恋もなき身はいまさらのごとくにも恍惚として雲を見るかな 『人間経』

このままに石となるべきここちしぬ膝を抱きて物を思へば

わが思ひ風に吹かれて飛ぶごとし木の葉のごときものならなくに  

うつそみのはらわたむうましさけ焼酎を盛るぎやまんぞこれ 『天彦』

厭離庵あんりあんのゆふべしづけし炉のうへの釜のたぎちもやがて消ゆがに  

寂しければ或る日は酔ひて道の辺の石の地蔵に酒たてまつる 

「しつ、人が死んだのだ」といふ灰色の人の言葉にすべては終る 『吉井勇全集』

ひとりなり心さびしきの子なり大海おおうみおもひ笑む日はあれど (歌集未収録)

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