初夏 はつなつ
立夏の頃から梅雨入りまでの季節を指す言葉。木々の緑も美しく、風も心地よいころ。湿気の多い日本の風土の中で、清々しく爽快さを感じる季節である。「はつなつ」という語が一般化したのは比較的新しく、歌の世界でも近世以前の和歌や俳句には極めて少ない。新春を表す「はつはる」の言葉の影響で、明治中期以後に多用されるようになりました。
初夏の短歌
はつ夏の日の照りわたりたる狂院のせとの土原に軍鶏むらがれり 斎藤茂吉
きさくなる蜜蜂飼養者が赤帯の露西亜の地主に似たる初夏 北原白秋
初夏の野は光るなり大麦のかぜのなかなる君が唇 前田夕暮
はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる 塚本邦雄
蔵王より南のかたの谿谷に初夏のあさけの靄たなびきぬ 斎藤茂吉
この初夏の日に赤土のひややけき路みえてをり松の間に 佐藤佐太郎
ブラウスの中まで明かるき初夏の日にけぶれるごときわが乳房あり 河野裕子
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