薔薇について
薔薇といえば、ヨーロッパ・中国・日本の野生種を園芸用に改良された、つる性の低木を指します。花形や花色も多彩で、株立ちの低木、つる性、匍匐性、15~50cmのミニチュアなどがあります。
北半球の温帯域に広く自生していて、アジアから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝わりました。ちなみに南半球にはバラは自生しないそうです。
日本では古来「薔薇」と記して、「しょうび」「そうび」と読ませる場合がありました。歌語としては、「うばら」「うまら」 の古称で読み『万葉集』には二首あります。古来から身近な花としていたことが示されています。
〈棘原〉は、トゲのある植物を総称する言葉として使用されていました。〈荊〉は、野生種の白い花を咲かせるもので、現在、野ばらと呼ばれている品種に近いと考えられています。
薔薇の入った歌
枳の棘原刈り除け倉立てむ屎遠くまれ櫛造る刀自 忌部首
道の辺の荊の末に這ほ豆のからまる君を別れか行かむ 丈部鳥
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる 正岡子規
ああ四月西の国には薔薇さく日東の国にさくらにはふ日 堀口大学
たそがれの鼻唄よりも薔薇よりも悪事やさしく身に華やぎぬ 斎藤史
薔薇と襤褸と赤子はひとつものならめ涸れたる風の林を過ぎゐる 葛原妙子
薔薇花にリボンをつけて持て来るいつの日とてもよき贈りもの 前川佐美雄
みづからの光のごとき明るさをささげて咲けりくれなゐの薔薇 佐藤佐太郎
薔薇抱いて湯に沈むときあふれたるかなしき音を人知るなゆめ 岡井隆
花の名を読めば異国の声となる吾ら逃避のごとく薔薇園 安永蕗子
ばらがきを明るい雨が通りすぎるなにもかもみんな単純にかへれ 加藤克巳
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