【宮沢 賢治】『16選』 知っておきたい古典~現代短歌!

崑崙花(こんろんか)

崑崙花(こんろんか)

宮沢 賢治 (みやざわ けんじ)

1896年~1933年 岩手県生まれ。 童話作家。 詩人。

宮沢賢治の短歌創作は、1909(明2)年、中学入学の頃から始まった。石川啄木や北原白秋の影響を受けている。1912(明4)年の中学時代から1918(大7)年、盛岡高等農林学校卒業頃までは短歌の創作を主としていた。

現在見られる賢治の短歌は、「歌稿 A」「歌稿B」と仮称される手書きの未発表原稿によるものが大部分である。

宮沢 賢治 歌集

2006年 新編宮沢賢治歌集 単行本 

宮沢 賢治 短歌

あすのあさは夜あけぬまへに発つわれなり母は鳥の骨など煮てあり。『宮沢賢治全集』

うしろよりにらむものありうしろよりわれらをにらむ青きものあり。

今日よりぞ/分析はじまる/瓦斯の火の/しづかに青くこゝろまぎれぬ。

朽ちのこりし/玉菜の茎を青ぞらに/投げあげにつゝ/春は来にけり。

雲ひくき峠越ゆれば/(いもうとのつめたきなきがほ)/丘と野原と  

この坂は霧のなかより/おほいなる/舌のごとくにあらはれにけり。

シベリアの汽車に乗りたるこゝちにて/晴れたる朝の教室に/疾む。

すゝきの穂/みな立ちあがり/くるひたる /楽器のごとく百舌は飛び去る。

清吉が/校長となりし/学校は/朝の黄雲に洗はれてあり  

なつかしきおもひでありぬ目薬のしみたる白きいたみの奥に。

ひがしぞら/かゞやきませど丘はなほ/うめばちさうの夢をたもちつ。

深み行きてはては底なき淵となる/夕ぐれぞらのふるひかなしも。

みなそこの/黒き藻はみな月光に/あやしき腕を/さしのぶるなり。 

屋根に来てそらに息せんうごかざるアルカリいろの雲よかなしも。

ラムプもちならびてあれば青々と廊下のはてに木の芽ゆれたり  

わがために/待合室に灯をつけて/駅夫は問ひぬいづち行くやと。

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