介護の悩み解決!健康寿命を延ばすロコモ予防・対策法
はじめに~超高齢社会に向き合う
日本は世界トップクラスの長寿国です。しかし、社会全体が高齢化し、介護の悩みや不安を抱える方が増えています。特に近年注目されている「ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)」は、要介護や寝たきりの大きなリスクとして知られています。「どう予防し、健康寿命を延ばすか?」「中高年でもできる対策は?」。多くの方が抱えるこの課題について、専門的なデータと信頼できる解決策をもとに、悩み解決のヒントをまとめました。
1. 行動編
ロコモ(運動器症候群)とは
ロコモティブシンドロームは、立つ・歩くなどの運動能力を支える骨や筋肉、関節などの「運動器」が衰えることで、日常生活に支障をきたす状態です。日本整形外科学会は2007年にこの概念を提唱し、介護予防の重要なテーマになっています(参考:日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/ )。2018年、内閣府「高齢社会白書」によれば、全国でロコモに該当する人は約4600万人にのぼります。
(高齢社会白書 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_1_3.html )
①運動週間の確立
【具体的なアクション:運動は最も効果的な予防法】
運動は、ロコモの予防と進行の抑制に最も重要な役割を果たします。厚生労働省「健康日本21(第二次)」によれば、週2回以上、30分間の中強度運動(早歩きなど)を行った人は、運動機能の低下リスクが23.7%も低減したと報告されています(厚生労働省 健康日21 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21/ )。
【推奨アクション例】
- 片足立ち(1分間、1日3回)
- スクワット(10回×3セット)
- 1日8000歩以上のウォーキング
これらの運動は筋力やバランス機能の維持・向上に効果的と「日本理学療法士協会」も推奨しています(https://www.japanpt.or.jp/ )
②食生活の改善
【具体的なアクション:五大栄養素をバランス良くとる】
骨や筋肉の健康維持に、栄養バランスの良い食事は不可欠です。ビタミンD、カルシウム、たんぱく質の十分な摂取が重要とされています。「厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、65歳以上の感染後筋力低下リスクは、たんぱく質の摂取量が推奨量の70%未満だと48.6%高くなるとのデータがあります(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586565.pdf )
【推奨アクション例】
- 和洋中問わず、主菜・副菜・汁物を組み合わせる
- 朝食は抜かず、野菜・魚・大豆製品を意識
- 毎食にたんぱく質源を取り入れる(卵、魚、鶏肉、豆腐など)
③生活習慣の見直し
【具体的なアクション:生活全般のバランスを整える】
- 質の良い睡眠(寝る1時間前はスマホやTVを控える)
- 適度な休養をとる
- ストレスコントロール(趣味や交友関係を大切に)
④セルフチェックと家族のサポート
【具体的なアクション:現状把握と早期対応】
日本整形外科学会が推奨するロコモチェックリストの7項目(上記参照)は、日常生活での変化に早く気づくきっかけになります。当てはまる項目があれば、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談するのが大切です。
【家族のサポート】
一人で抱え込まず、家族と「最近転びやすい」「歩きづらくなった」など小さな変化を話すことも、介護予防では非常に有効です。
⑤地域・行政サービスの活用
【具体的なアクション:外部資源を利用する】
市区町村の健康講座や運動教室への参加、介護予防事業を活用することも有益です。厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業」では、運動機能リハビリの教室も各地で提供されています。
自己診断してみよう
下のチェックリストにある7項目で1項目でも当てはまればロコモの心配があります。
チェックしてみましょう。
1.⬜ 片足立ちで靴下が履けない
2.⬜ 家の中でつまずいたり滑ったりする
3.⬜ 階段を上がるのに手すりが必要
4.⬜ 家の中の、やや重い仕事が困難
5.⬜ 2kg 程度の買い物をして持ち帰るのが困難
6.⬜ 15分ぐらい続けて歩くことができない
7.⬜ 横断歩道を青信号で渡りきれない
参考:日本整形学会
予防と治療法
誰もがロコモになる可能性がありますが、進行を防ぐことは可能です。
【おすすめ】自宅で手軽にできる運動
バランス能力をつける片足立ち
下肢の筋力をつけるスクワット
ふくらはぎの筋力をつけるヒールレイズ
その他、下肢の柔軟性・バランス能力・筋力をつける体操などがあります。
2. 反論編
「ロコモ対策さえすれば、介護の悩みは本当に解決するのか?」
①多様な要因の存在
介護に関する困りごとは、運動器の衰えだけに起因しません。厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査」によれば、要介護の主な原因として「認知症」が17.1%、「脳血管疾患」が15.7%、「高齢による衰弱」が13.5%、「骨折・転倒」が12.5%と幅広く、運動不足やロコモだけではない複合的な要因があるとされています(厚生労働省国民生活基礎調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa17/index.html )
②運動や食事改善だけでは限界
科学的な根拠として「雑誌『Journal of Aging and Health』に掲載(2020年)」の調査では、介護予防教室に参加しても、家庭内で実践できなかった群は運動能力の大きな改善がみられなかったとされています。「家族や本人の意思」「生活習慣や経済的事情」など多様な現実的制約が存在します。
③高齢者ごとの個別要件
75歳を超えると、個人差が大きくなります。ロコモ予防運動が体に負担をかけ、逆に膝を痛める場合もあると「日本老年学的評価研究」(JAGES、2017年)は指摘します(JAGES https://www.jages.net/ )認知機能や心疾患など別のリスクがある場合は、画一的な運動・食事指導が危険です。
④社会・経済的背景の影響
高齢者の孤立、経済的困難、持病の多さなどの社会的要因も深刻です。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、65歳以上単身高齢者の生活困窮率は19.8%(2017年)であり、日々の運動やバランスの良い食事すら叶わない人が少なくありません(国立社会保障・人口問題研究所 https://www.ipss.go.jp/ )
⑤「介護される側」の心理負担
身体機能の低下や要介護状態になることで、本人の自己肯定感やうつのリスクが上がるという研究もあります(慶應義塾大学 医学部精神・神経科学教室 2016年公開講座 )。
従って、ひとつの対策だけで「介護の悩みが全て解決する」とは言い切れません。「運動」「食事」だけでなく、「社会制度の整備」「家族の理解」「本人の生活への意欲づくり」など複合的な取り組みが不可欠です。
3. まとめ
介護の悩みの多くは、年齢とともに誰もが直面し得る問題です。本記事で取り上げたロコモティブシンドローム(ロコモ)は、要介護や寝たきりを招く大きな要因として注目されています。運動や食事改善の重要性と具体策(毎日のウォーキング・片足立ち・バランス食)を実践することでリスクを下げられるのは、多くの研究や統計データから明らかです。
しかし、介護の悩みには運動器の衰えだけでなく、認知症・持病・孤立や経済的困難など、複合的な課題が関わります。したがって、予防策・対策は一面的ではなく、生活状況や心身の状態に応じて多角的に考える必要があります。家族や地域、行政サービスの支援を受けること。早めの受診や相談をためらわないことも、重要なアクションになります。
事実として、日本においては65歳以上の高齢者の28.4%が何らかの不安や悩みを持ち、「要介護状態になった経験がある人」は312万人(2020年、厚生労働省老健局)といわれています。そのうち、骨折や転倒が原因で要介護となった人は約12.5%にのぼります(厚生労働省国民生活基礎調査より)。
最後に、「動ける体を維持し、自立した生活を送る」こと自体が大きな喜びと自己肯定感につながります。一つひとつできることから始めて、専門家・家族とともに「介護の悩み解決」へ向かいましょう。
◆参照元一覧◆
- 日本整形外科学会 https://www.joa.or.jp/
- 内閣府 高齢社会白書 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_1_3.html
- 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/
- 日本理学療法士協会 https://www.japanpt.or.jp/
- 国立社会保障・人口問題研究所 https://www.ipss.go.jp/
- JAGES https://www.jages.net/
- 慶應義塾大学 https://www.keio.ac.jp/ja/
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