岡井隆(おかいたかし)

 岡井隆(おかいたかし)

1928年(昭和3年)1月5日 ~ 2020年(令和2年)7月10日 愛知県名古屋出身。

歌人・詩人・文芸評論家。未来短歌会発行人。日本藝術院会員。

父弘は「アララギ」歌人、斎藤茂吉の弟子。1945年旧制八高入学、終戦後、 疎開先の三重県高角たかつめの農家で家族と暮らし、ここではじめて歌を作った。1950年慶応大学医学部に入学。51年「未来」が創刊さ れ、中心的存在として編集に携わる。2001年6月から編集発行人に。当時の作品は処女歌集『斉唱』に収められているが、たちまち手中のものとした模写の水準の高さと、いかにも青年らしい繊細にして感受性豊かな抒情歌 が、近藤芳美の直接の影響をうけた社会的関心と行動の中によく調和している。

歌集に『斉唱』『禁忌と好色』(第17回迢空賞受賞)『親和力』(斎藤茂吉短歌文学賞)『蒼穹の密』『宮殿』『ウランと白鳥』(詩歌文学館賞)『大洪水の前の晴天』『ヴォツェック/海と陸』

著書は歌集のほかに『海への手紙』『現代短歌入門』『正岡子規 』『遥かなる斎藤茂吉』『詩歌の近代』など評論、エッセイが多数。1987年にはそれまでの歌業を『岡井隆全歌集』(二巻)にまとめる。1996年には評論集成『岡井隆コレクション』(八巻) 『折口信夫の晩年』『神がみの座』『花幾年』『華の記憶』『歌を恋うる歌』『悲歌の時代』『折口信夫の記』など多数。

百日紅

撮影たまごや

 

愛しつつ近づかざりき一年を君の最後の友人として 『斉唱』

抱くとき髪に湿りののこりいて美しかりし野の雨を言う

一時期を党に近づきゆきしかな処女おとめに寄るがごとく息づき

常磐線わかるる深きカーヴ見ゆわれに労働の夜が来んとして

背の真央まなかにうずく〈階級〉の烙印をねがわくは消せ 泉の沐浴

父よ その胸廓ふかきところにて梁からみ合うくらき家見ゆ

眠られぬ母のためわがむ童話母の寝入りし後王子死す

今日一日南の風をよろこびし緋鯉真鯉をひきおろしたり

 

白い百日紅

撮影たまごや

 

 

 

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