春の歌
朝晩は肌寒さがありますが、気候の良い穏やかな季節です。春という語は、草木の芽が「張る」、田畑の開墾の「墾る」、気候の「晴る」などを語源とするという説があります。また、春は生命力が盛んに活動する季節であり、人間の色欲、情欲を意味も持ちます。
古代和歌から現代短歌まで、和歌の歴史をみると、春と秋の歌は、数において夏や冬より多く詠われています。
春の短歌
霞たち木の芽も春の雪ふれば花なき里も花ぞちりける 紀貫之
にはとこの新芽を嗅げば青くさし実にしみじみにはとこ臭し 木下利玄
おぼろめく春の夜中を泡立ちて生れくるもの数かぎりなし 前川佐美雄
背のびして唇づけ返す春の夜のこころはあはれみづみづとして 中城ふみ子
いちはつの花咲きいでゝ我目には今年ばかりの春行かんとす 正岡子規
我が涙そゝぎし家に知らぬ人住みてさゞめく春の夜来れば 窪田空穂
診断を今はうたがはず春まひる癩に堕ちし身の影をぞ踏む 明石海人
動乱の春のさかりに見し花ほどすさまじきものは無かりしごとし 斎藤史
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