【明石 海人】『16選』知っておきたい古典~現代短歌!

 

梔子 八重咲き

梔子 八重咲き

明石 海人(あかし かいじん)

1901~1939年 本名は野田勝太郎。 静岡県出身。 昭和初期の歌人。

25歳の年にハンセン病を発症。それをきっかけに俳句、短歌、詩、エッセイなどの創作に打ち込む。

死の直前に歌集『白描』を刊行。死後の1939年にベストセラーとなる。

 

明石 海人 短歌

あらむ世を商買の類に生れきて色うつくしき酒は霧がむ 『白描 』

医師の眼のおだしきをふ窓の空消え光りつつ花の散り交ふ

診断を今はうたがはず春まひるかたるに堕ちし身の影をぞ踏む

捜り行く路は空地にひらけたりこのひろがりの杖にあまるも

たそがるる青葉若葉にいざなはれ何に堕ちゆくこの身なるべき

偶々に秋の日なかを降りたてば眼にはうつらね空のはるけさ

父母のえらび給ひし名をすててこの島の院に棲むべくは来ぬ

父我の癩を病むとは言ひがてぬこの偽りの久しくもあるか

つばくらめ一羽のこりて昼深し畳におつる糞のけはひも

時ありて言にもたがひ癩者我れ癩を忘れて君にしたしむ

 

鼻ありて鼻より呼吸のかよふこそこよなき幸の一つなるらし

一人の世の涯とおもふ昼ふかき癩者の島にもの音絶えぬ

降る雨の日暮はさむしあはあはと壁のよごれに灯は滲みつつ

路々にむらがる銀の月夜茸蹴ちらせばどつと血しぶきぞたつ

眼も鼻も潰え失せたる身の果にしみつきて鳴くはなにの虫ぞも

わが指の頂にきて金花虫のけはひはやがて羽根ひらきたり

 

 

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