【中学生】以上に知ってもらいたい短歌。『葛原妙子』

柚子

柚子

葛原妙子(くずはらたえこ)

1907~1985年 歌人。東京出身。日本歌人クラブ会員、女人短歌会会員。現代歌人協会発起人。南日本新聞歌壇選者。現代短歌女流賞選考委員。

葛原妙子 短歌

1939年「潮音」会員となり、太田水穂・四賀光子に師事。戦後の歌壇に大きな影響を与えた代表的歌人の一人。1949年「女人短歌」 創刊に参加、会員となる。作歌の環境として、五島美代子・森 岡貞香・中井英夫・塚本邦雄の名をあげている。1981年、季刊歌誌「をがたま」を創刊し編集発行人となるが、1983年に終刊し、作歌活動を終える。

著作【歌集など】『橙黄』(女人短歌会)『縄文』(未刊歌集)『葛原妙子歌集』(三一書房)『飛行』(白玉書房)『原牛』(白玉書房)『葡萄木立』(白玉書房)『朱霊』(白玉書房)『葛原妙子歌集』(三一書房)『鷹の井戸』(白玉書房)『薔薇窓』(白玉書房)『葛原妙子歌集』(国文社)『葛原妙子全歌集』(短歌新聞社)『葛原妙子全歌集』(砂子屋書房)

 

アンデルセンのその薄らに似し童話抱きつつひと夜ねむりに落ちむとす 『橙黄』

近視、乱視、潜伏性斜視わが持ちて模糊錯落のこの春の視野

垂直に振子ぞ垂れて動かざる時計ひとつありわが枕がみ

竹煮ぐさしらしら白き日をかえす異変といふはかくしづけきか

とり落さば火焰とならむてのひらのひとつ柘榴の重みにし耐ふ

喪のいろのたぐひとおもふもんぺ穿き山の華麗にむかはむとする

夜の葡萄くちにふれつつ思ふことおほかたは世に秘すべくあるらし

糸杉がめらめらと宙に攀づる絵をさびしくこころあへぐ日に見き 『飛行』

青き木の実の憂愁匂ふうつくしき壮年にしてめとらざりにき 『原牛』

わがもてる宝石ひとつ風絶えし夜の暗黒の中に瞋りをり

明るき昼のしじまにたれもゐず ふとしも 玻璃の壺流涕す 『葡萄木立』

 

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