小中 英之(こなか ひでゆき)
1937~ 2001年 京都生まれ。歌人。
北海道江差高等学校卒業後、上京して文化学院文科に入学するも中退。十代後半より作歌をはじめ、1955年の春より、詩人・俳人の安東次男に師事。1961年、歌誌「短歌人」に入会。
第一歌集『わがからんどりえ』は、 死への意識の強い世界を思わせる歌が多い。生来、病身であり、少年時に体験した敗戦の記憶が、現実を排斥した独特の美しい世界を築かせている。
昼顔のかなた炎えつつ神神の領たりし日といづれかぐはし『わがからんどりえ』
遠景をしぐれいくたび明暗の創のごとくに水うごきたり 『わがからんどりえ』
この寒き輪廻転生むらさきの海星に雨のふりそそぎをり
ゆきゆきて桑の実食むもまたかなしいかばかり身のいづこ黒ずむ
わが死後の骨の壺かもひとへなる椿あかきをたつぷりと挿す
われはわれをこばまむとして桑の実の黒きかがやきほろぶ曇天
今しばし死までの時間あるごとくこの世にあはれ花の咲く駅
つはぶきの花は日ざしをかうむりて至福のごとき黄の時間あり
鶏ねむる村の東西南北にぼあーんぼあーんと桃の花見ゆ
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