米川 千嘉子 (よねかわ ちかこ)
1959年~ 千葉県生まれ。歌人。
早稲田大学第一文学部卒業。その後、早稲田大学教育学部国語国文学専攻科修了。1979年、短歌結社「かりん」に入会。馬場あき子に師事。古典への造詣と豊かな感性にあふれ、時流とは一線を画した歌の姿を示して注目される。
米川 千嘉子 歌集
1988年 第一歌集『夏空の櫂』 砂子屋書房
1993年 第二歌集『一夏』 河出書房新社
1998年 第三歌集『たましひに着る服なくて』 砂子屋書房
2001年 第四歌集『一葉の井戸』 雁書館
2004年 第五歌集『滝と流星』 短歌研究社
2007年 第六歌集『衝立の絵の乙女』 角川書店
2012年 第七歌集『あやはべる』 短歌研究社
2015年 第八歌集『吹雪の水族館』 角川文化振興財団
米川 千嘉子 短歌
暑がりの青大将が落ち来ると能登の銀杏は ふり仰がれぬ 『夏空の罹』
いかなる思慕も愛と呼びたることなくてわれの日記は克明なりき
鬱ふかきわれを少年は連れ去る借物競争の借物として
〈女は大地〉かかる矜持のつまらなさ昼さくら湯はさやさやと澄み
白藤のせつなきまでに重き房かかる力に人恋へといふ
セロリイを抱き子を抱きゆらゆらと女らの皮膚昼を触れあふ
氷河期より四国一花は残るといふほのかなり君がふるさとの白
ひるがほいろの胸もつ少女おづおづと心とふおそろしきもの見せに来る
やはらかく二十代批判されながら目には見ゆあやめをひたのぼる水
魚の生や鳥の生すぎて育ちゆくさむさつぶさに胎を蹴るとき 『一夏』
苦しむ国のしづかにふかき眉としてアイリッシュアメリカンゲイの列ゆく
コスモスのくれなゐ揺れて風を煮る風に子供は言葉をのせて
千五百産み千人殺しし世のつづき 秋空といふはるか澄む水
乳与へて立ち上がりたれば草も陽も一夏の濃ゆき輪郭に燃ゆ
たちまちに女はみごもり秋の陽に百合根のやうな嬰児を見す 『たましひに着る服なくて』
父の家の障子張り替ふ裸なる桟はうつくし若き父見ゆ
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