三国 玲子 (みくに れいこ)
1924年~1987年 東京生まれ。 歌人。
三国慶一の長女。アララギ派の鹿児島寿蔵に師事。戦後にいち早く出発をした女流歌人。1954年(昭29)刊 の第一歌集『空を指す枝』は清新な青春歌集で注目される。
結婚後の作品は思想性・批判性を帯び、後、ふたたび表現の豊饒と感性の深化に向ったが、入院中に自死。歌壇に衝撃を与えた。
三国 玲子 歌集
1954年 歌集『空を指す枝』 白玉書房
1965年 歌集『花前線』 新星書房
1970年 歌集『噴水時計』 短歌新聞社
1978年 歌集『蓮歩』 角川書店
1981年 歌集『灯の集團』 沖積舎
1981年 自選歌集『桃花紅』 短歌新聞社
1983年 歌集『晨の雪』 不識書院
1986年 歌集『鏡壁』 不識書院
1988年 三國玲子歌集『翡翠のひかり』 短歌新聞社
2005年 『三國玲子全歌集』 短歌新聞社
三国 玲子 短歌
徐ろに吾に集まりくる視線たやすく吾を容るる眼ならず 『空を指す枝』
仮借なき罪の意識におびえつつ砂の乾きし鋪道をゆきぬ
希まざりし子を生み衰へてゆく過程周囲に見たり憤りもちて
ミシンライト灯して励む幾日かタベタベの空の恋ほしく
邂逅ひて今日あることのはかなきに待ちつつ昼の虹を見てをり
ただ一人の束縛を待つと書きしより雲の分布は日日に美し 『花前線』
跳躍のときを待ちつつ日本選手孤り四肢細く佇てるがあはれ 『噴水時計』
紙を截る音しきりなる工房のかく明るきは心さわだつ 『蓮歩』
フォークダンスの輪は眼下に動きそむ若くあらば楽しきや今若くあらば
われは常に過ぎゆく一人雪の中に菜の花を配るをとめらを見て
一揺れして昇降機止りぬこの中に柩が立つてゐるかも知れず 『鏡壁』
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