【三ケ島葭子】『10選』 知っておきたい古典~現代短歌!

ヤブカンゾウ(藪萱草)忘れ草

ヤブカンゾウ(藪萱草)忘れ草

三ケ島 葭子 (みかじま よしこ)

1886年~1927年  埼玉県生まれ。歌人。本名、倉片よし。

結核のため埼玉女子師範学校中退。1909年(明治42)に新詩社に入り、次い雄で「青鞜せいとう」同人となる。次第に地味な写実に傾き、 1916年(大正5)「アララギ」に入会。両時期の歌を合わた歌集『吾木香われもこう』を刊行。後に原阿佐雄はらあさおとの親交のため「アララギ」を去り、古泉千樫こいずみちかしの門に入る。後に「青垣会」結成に参加。

三ケ島 葭子 歌集

1921年 『吾木香』(東雲堂書店)

1934年 『定本三ヶ島葭子全歌集』(短歌新聞社)

1981年 『三ヶ島葭子日記』(上下巻・至芸出版社)

 

三ケ島 葭子 短歌

夏の世の賑はふ町を別るべき子の手を引てゆきもどりけり 『吾木香』

いへのうち鍋などさげてゆきかへるゆふぐれにきく秋雨あきさめの音 『三ヶ島葭子全歌集』

裏庭に落つると鳴きし蝉のこゑこの真夜中の暗にひびきし  

往来に馬をとどめて荷をろす人の汗にほふ家の中まで

しみじみと障子うす暗き窓の外音たてて雨の降りいでにけり

たへがたくものなつかしき夕ぐれよわがくしをさへ手にとりて見る  

たまゆらのわれの心に漲りしかの憎しみを人は知らぬなり  

天井に手洗水のてりかへしゆらめく見れば夏は来にけり  

枕あげてわが見たる時フリジヤのすがしき花は光りけるかも  

ゆくりなく眠さむれば灯ともれり今は夜な りと思ふしづけさ

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