稲(米)と歌
稲はイネ科イネ属の植物で、トウモロコシや小麦に並ぶ、世界三大穀物の一つです。昨今では消費が落ちてきたものの、稲の種子である米を主食としてきた日本人にとっては、四季の変化を教えてくれる生活の中心植物です。
『万葉集』の東歌の中には、農村で伝承された民謡らしい、稲の民俗の歌があります。
稲舂けば皹る吾が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ 作者未詳
おして否と稲は舂かねど波の穂のいたぶらしもよ昨夜独り寝て 作者未詳
鳰鳥の葛飾早稲を饗すともその愛しきを外に立てめやも 作者未詳
稲、米の短歌
稲刈りて淋しく晴るる秋の野に黄菊はあまた眼をひらきたり 長塚節
稲を扱く器械の音はやむひまの無くぞ聞こゆる丘のかげより 斎藤茂吉
稲を刈る手鎌に割きて野休みに食ふ西瓜はしたたりにけり 吉植庄亮
ものおもひなく 我は遊べど、鳥の如 夜目ぞ衰ふ。米を喰はねば 釈超空
見下しの棚田の面に浮苗は片寄りにけり日本の平和 宮柊二
空暗く雨しぶくなかに苗代を作る幾村をすぎてきにけり 岡野弘彦
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