今野 寿美(こんの すみ)
1951~東京出身。歌人。りとむ短歌会編集人。宮中歌会始選者。神奈川歌壇選者。
1992年、夫の三枝昂之と「りとむ」を創刊。身近なものの対象や自らの心理を、古典的文体を基本とする、心地好い調べにのせて歌った作品で知られる。
歌集に『花絆』『星刈』『黒豹』『世紀末の桃』『若夏記』『鳥彦』ほか
光芒の水に折れゆく見てあれば調弦の音ほかにきざす 『花絆』
その五月われはみどりの陽の中に母よりこぼれ落ちたるいのち
追憶のもつとも明るきひとつにてま夏弟のドルフィンキック
人あらぬ野に木の花のにほふとき風上はつねに処女地とおもふ
もろともに秋の滑車に汲みあぐるよきことばよきむかしの月夜『星刈り』
あの夏の言葉よりなほ無防備にさらす咽喉にいま触れてみよ『世紀末の桃』
身の芯を持たず一縷の闇つつみ伸びて気のすむ青竹ばかり
桃よよと啜れる男をさなくて奪ひしやうに父たらしめぬ
やはらかに文語の季節去りにけり花見むとしてわれは目を閉づ
こそばゆき嘘つくごとし緑濃きアスパラガスのさきっぽ食めば『若夏記』
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