認知症の早期発見と家族ができる具体的な対応策

認知症 早期発見

認知症 早期発見

【今こそ知りたい 「介護の準備」―認知症も早期発見が大切】

高齢化社会が進む現代では、認知症は誰にとっても身近な問題となっています。家族や親しい人が「最近、物忘れがひどくなった」「同じ話を何度も繰り返す」など、ちょっとした変化に気づいたとき、それは単なる老化現象なのか、それとも認知症の始まりなのか、不安になる方も多いでしょう。

認知症は誰にでも起こりうる脳の病気であり、早めに気づいて適切な対応をすることで、ご本人もご家族も安心して毎日を過ごすことができます。特に「早期発見」は、その後の生活の質や人間関係、介護負担の軽減にも大きく影響します。まずは、認知症とはどんな病気なのか、その種類や特徴について正しく理解しましょう。

 

認知症とは?基本から正しく理解しよう

認知症は脳細胞が壊されることで記憶力や判断力など様々な能力が低下し、日常生活に支障が出る病気です。特に日本では高齢者人口の増加とともに患者数も増加傾向にあります。しかし、「年だから仕方ない」と思われがちなもの忘れも、実は認知症によるものかもしれません。

日本人に多い代表的な認知症には以下の4種類があります。

  1. アルツハイマー型認知症
    全体のおよそ半数以上を占めます。脳全体、とくに記憶を司る海馬という部分が萎縮し、ゆっくりと進行します。「さっき食事したこと自体」を忘れるなど、新しいことを覚えられなくなるのが特徴です。
  2. 脳血管性認知症
    脳梗塞や脳出血など脳血管障害(いわゆる脳卒中)によって起こります。高血圧や糖尿病など動脈硬化につながる生活習慣病にも注意が必要です。障害された部分以外は比較的機能が保たれるため、「できること」と「できないこと」の差が目立つ場合があります。
  3. レビー小体型認知症
    全体の約10%程度です。幻視(実際には存在しないものを見る)、筋肉のこわばりや動作緩慢などパーキンソン病に似た運動障害も伴います。特徴的なのは、調子が良い時と悪い時で波がある点です。
  4. 前頭側頭型認知症
    人格変化や行動異常が中心で、「同じ言葉や行動を繰り返す」「急激に頑固になる」など性格面で目立った変化があります。物忘れよりも行動面・感情面で周囲とのトラブルになりやすいタイプです。

どんなタイプでも共通して言えることは、「初期段階で気づいて適切な対応・治療につなげる」ことが、ご本人とご家族双方の負担軽減につながります。

 

初期サインを見逃さない!日常生活で注意すべきポイント

「物忘れ」は老化現象でもあります。しかし、「食べた内容だけでなく食事自体を忘れる」「何度も同じ質問をする」「財布など身近なものを盗まれたと思い込む」などの場合は要注意です。

【チェックリスト例】

  • 今電話した相手の名前をすぐ忘れてしまう
  • 同じ話題・質問・行動を何度も繰り返す
  • 探し物・置き忘れ・しまい忘れが増える
  • 財布・通帳など大事なものについて他人を疑う
  • 新しいこと(テレビ番組内容など)が覚えられない
  • 計算ミスや料理ミス、運転ミスなど判断力低下
  • 日付・場所・季節感覚がおかしくなる
  • ささいなことで怒りっぽくなる/頑固になる
  • 趣味への興味喪失/身だしなみへの無関心

このような項目はいずれも「医学的診断基準」ではありません。しかし複数当てはまれば一度専門医への相談がおすすめです。「まだ大丈夫」と思わず、小さな違和感こそ早期発見への第一歩になります。

 

認知症診断までの流れ~受診前から始まっている“記録”~

受診時には、ご本人だけでなくご家族による日々の観察記録(いつからどんな様子だったか)が非常に参考になります。医師による問診・簡単なテスト(MMSE等)・血液検査・頭部画像検査(MRI/CT)等を組み合わせて総合的に診断されます。「自覚」が薄かったり伝えづらかったりする場合こそ、ご家族によるメモ(日記形式でもOK)が役立ちます。

また、“かかりつけ医”との連携も重要です。普段から健康管理について相談できる医師なら、小さな変化にも気づいてくれる可能性があります。不安になったら遠慮せず相談しましょう。

 

認知症初期にはどんなサポートが必要?

初期段階では、ご本人にも自覚があります。そのため不安感や落ち込み(抑うつ)、自信喪失など心理的ダメージも大きくなる傾向があります。「最近怒りっぽくなった」「ふさぎ込んでいる」という様子にも注意してください。また、ご本人自身から「頭がおかしい」と訴えるケースもあります。この段階から適切に関われば、その後の日常生活維持につながります。

【具体的サポート例】

  • ご本人の話に耳を傾け、不安感を和らげる
  • 出来ていること・得意分野には積極的に関わってもらう
  • 簡単な役割分担(ゴミ出し、水やり等)で自己肯定感UP
  • 外出や趣味活動へ無理なく誘う(社会参加)
  • 必要なら地域包括支援センター等へ相談

 

行動心理面で現れる特徴~BPSDとは~

BPSDとは「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」の略称ですが、日本語では「行動・心理症状」と呼ばれます。妄想(例:財布盗難妄想)、幻覚(幻視・幻聴)、徘徊、暴言暴力、不眠、不安焦燥――これらはご本人だけでなく介護者にも大きな負担となります。しかしBPSDは環境調整やコミュニケーション改善、薬物療法などによって軽減可能です。一人で抱え込まず専門職へ相談しましょう。

 

初期サイン&対応

高齢者人口比率世界一となった日本では、今後ますます“介護”への備えと意識改革が求められています。その中でも“認知症”というテーマは、多くの家庭で避けて通れない現実となっています。「親世代」「配偶者」「自身」…誰もが当事者になり得ます。そのため、“予防”より“早期発見”という視点転換こそ重要です。

多様化する初期サイン

一般的には「物忘れ=認知症」と考えられています。しかし実際には、

  • 判断力低下による買い物ミス、お金管理ミス
  • 時間感覚喪失による約束日時間違いや迷子
  • 性格変化として怒りっぽさ、不安感増大、自信喪失

このように“記憶以外”にも多彩なサインがあります。また、「妄想」「幻視」など非現実的体験への執着、「外出時持ち物確認回数増加」等細かな兆候にも注目しましょう。

介護準備=情報収集+相談先確保+心構え

介護準備として最優先なのは、“情報収集”と“相談先確保”です。

  1. 地域包括支援センターへ登録しておく
  2. かかりつけ医との定期交流
  3. 市区町村主催セミナー参加
  4. 家族内コミュニケーション強化

また経済面でも、公的サービス利用方法(介護保険申請等)について把握しておけば安心材料になります。“独りぼっち介護”にならぬよう地域資源活用術も身につけましょう。

【周囲との協力体制構築】

ご本人、ご家族だけでは限界があります。“困った時には助け合う”文化作り――これこそ日本社会全体で取り組むべき課題でしょう。

 

問題解決への具体策

  1. 日々観察&記録
    • 小さな違和感でも必ずメモする習慣づけ。
    • チェックリスト活用(日付入り)。
    • 気になる点は週単位でまとめておく。
  2. 定期健診&専門医受診
    • 年1回以上健康診断+必要なら神経内科受診。
    • 診断結果次第ではセカンドオピニオン推奨。
  3. 地域資源フル活用
    • 地域包括支援センター登録。
    • ケアマネジャー選任&公的サービス申請。
    • デイサービス/ショートステイ/訪問看護活用。
  4. 家族会議開催
    • 役割分担決定。(例:金銭管理担当/通院付き添い担当)
    • 定期的情報共有LINEグループ作成。
  5. ご本人主体尊重
    • 得意分野/好きだった趣味活動維持促進。
    • 出来ていることへの積極評価&声掛け。
  6. 外部専門職連携
    • 医師/看護師/ケアマネ/ヘルパー/福祉用具業者等との連絡網確立。
  7. 緊急時マニュアル作成
    • 徘徊対策GPS導入/緊急連絡先一覧表作成/警察署との連携確認。
  8. 心理ケア徹底
    • ご本人&介護者双方へのカウンセリング利用推奨。
  9. 最新情報キャッチアップ
    • 学会HP/厚労省ガイドライン/新聞記事定期チェック。

 

反論:主張への現実的多角検証&改善案

「早期発見=全て解決」という単純図式には落とし穴があります。現場では以下の課題もしばしば指摘されています。

【反論① “気付き”そのものが難しい

家族ほど“変化”になかなか気付けません。同居しているほど些細な違和感には鈍感になったり、「年齢相応」と片付けたりしてしまいます。また一人暮らし高齢者の場合、“観察者不在問題”という壁もあります。この場合どうするか?
→ 解決策:「地域ぐるみ」で声掛け運動推進、市民ボランティア制度導入、高齢者向けスマートウォッチ活用等テクノロジー利用促進

【反論② “受診拒否”“病識欠如”問題

ご本人自身、自分がおかしいとは思いたくありません。「まだ大丈夫」「恥ずかしい」という心理バリアゆえ受診拒否となります。また一部疾患では“病識欠如”(自分自身がおかしいという自覚そのものなし)が強いため周囲とのトラブルにもつながります。
→ 解決策:第三者(友人・民生委員等)から自然体で声掛けして協力仰ぐ/医療機関側でも“敷居低下策”(無料相談会開催等)推進

【反論③ “診断後ショック”“レッテル貼り問題”

正式診断されても、ご本人&家族とも精神的ショック大。「もう普通じゃない」とレッテル貼ってしまうケースあり。それによって逆に閉じこもったり孤立する危険性あり。
→ 解決策:“病名告げ方マニュアル”整備、“ピアサポート”(同じ悩み経験者交流会)強化、“希望持てる情報提供”(治療法開発ニュース紹介等)

【反論④ “制度利用ハードル”“サービス不足”

各種公的サービス申請手続き煩雑/人手不足ゆえ十分サービス供給されない地域格差あり/経済負担増加懸念…
→ 解決策:申請手続き簡素化オンライン申請普及/自治体独自支援拡充要望提出/民間保険商品活用検討

【反論⑤ “介護者負担過重”“共倒れリスク”

在宅介護の場合、とくに配偶者世代へ過重負担集中→共倒れリスク上昇。一方施設入所希望しても空き待ち状態…
→ 解決策:“レスパイトケア”(短期間預かりサービス)利用促進、“ヤングケアラー支援制度拡充”、ICT活用遠隔見守りシステム導入

 

認知症早期発見の目安

日常の暮らしの中で、認知症の始まりではないかと思われる言動をまとめました。医学的な診断基準ではありませんが、ご家族やご本人が気になる場合は専門家に相談してみましょう。

分類項目チェック
もの忘れがひどい1. 今電話を切ったばかりなのに、話し相手の名前を忘れる
2. 同じことを何度も言う・問う・する
3. しまい忘れ置き忘れが増え、いつも探し物をしている
4. 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う
判断・理解力が衰える5. 料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった
6. 新しいことが覚えられない
7. 話のつじつまが合わない
8. テレビ番組の内容が理解できなくなった
時間・場所が分からない9. 約束の日時や場所を間違えるようになった
10. 慣れた道でも迷うことがある
人柄が変わる11. ささいなことで怒りっぽくなった
12. 周りへの気づかいがなくなり頑固になった
13. 自分の失敗を人のせいにする
14. 「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた
不安感が強い15. 一人になると恐がったり寂しがったりする
16. 外出時、持ち物を何度も確かめる
17.「頭が変になった」と本人が訴える
意欲がなくなる18. 下着を替えず、身だしなみを構わなくなった
19. 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
20.ふさぎ込んで何をするのもおっくうがりいやがる

 

まとめ:

最後までお読みいただきありがとうございます。「認知症」という言葉には暗いイメージや不安しか浮かばない方も多いでしょう。しかし、本当に大切なのは「怖れるよりまず正しく理解する」姿勢だと思います。そして“早めに気付いて一歩踏み出す勇気”。それだけで未来はいくらでも明るくできます。

もし身近なお年寄りやご自身について少しでも「あれ?」と思う瞬間があれば、一度専門機関へ相談してください。「まだ大丈夫かな?」と思っている今こそ最大のチャンスです。一人ひとり違う人生、一人ひとり違うペース。でも誰だって尊厳ある暮らし、人との温かな絆は守れるはず――そのためのお手伝いとしてこの記事をご活用ください!

ご本人だけでなく介護する側にも悩み疲弊があります。一人きりで抱え込まず必ず周囲へSOSを出してください。“助け合える社会”“温かなネットワーク”、みんなで育んでいきたい価値観だと思います。

 

参考資料・引用元一覧

  1. 公益社団法人 認知症の人と家族の会: https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=1090
  2. 厚生労働省 認知症施策: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000072277.html

 

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