介護予防事業とは?一次・二次予防で自立支援

介護予防

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介護予防で高齢者の未来を守る

現代の日本社会では、高齢化が急速に進み、多くの方が介護の問題に直面しています。誰もが「できるだけ長く元気に、自分らしく暮らしたい」と願うものです。しかし、加齢による身体機能の低下や認知症のリスクは避けられず、要介護状態になることは決して他人事ではありません。そこで注目されているのが「介護予防事業」です。

介護予防事業は、高齢者が要介護状態になることを未然に防ぎ、また要介護状態になっても悪化を抑え、生活機能を維持・向上させることを目的としています。市町村や地域包括支援センター、医療機関など多様な関係機関が連携し、一人ひとりの健康づくりや生活支援をサポートしています。

特に、「一次予防」と「二次予防」という2つの柱で構成されており、元気な高齢者には健康講座や運動教室などで体力づくりや認知症予防を促し、体調に不安がある方には個別プログラムで生活機能の維持を図ります。こうした取り組みは、高齢者自身が主体的に参加できる環境づくりも重視しており、「通いの場」や地域コミュニティとのつながりが生きがいや心身の活性化につながっています。

 

1. 介護予防事業の基本的な考え方

介護予防事業は、高齢者が要介護状態になることを未然に防ぐために、市町村など自治体主体で行われています。大きく分けて「一次予防」と「二次予防」の2種類があります。

  • 一次予防事業
    元気な65歳以上の高齢者を対象に、健康づくり講座や運動教室、認知症やうつ病の予防プログラム、生きがい講座などを提供します。これは健康寿命を延ばし、自立した生活を長く続けるための活動です。
  • 二次予防事業
    生活機能に低下傾向が見られる高齢者(要支援認定前後)向けに行われます。個別評価によって適切な目標設定とプログラム作成が行われ、理学療法士や栄養士など専門職によるサポートで機能回復や悪化防止を目指します。

2. 介護予防事業が目指す6つのポイント

  1. 運動器機能向上
    筋力低下や骨粗しょう症による転倒リスク軽減。パワーリハビリやバランス訓練等。
  2. 栄養改善
    低栄養状態にならないよう食生活指導や料理教室。
  3. 口腔機能向上
    嚥下(飲み込み)障害対策として歯科指導や嚥下訓練。
  4. 閉じこもり(社会参加)予防
    外出促進、生きがい創出プログラム。
  5. 認知症予防
    簡単な頭脳トレーニングと交流活動。
  6. うつ病早期発見・対応
    保健師による訪問相談と医療連携。

3. 対象となる高齢者と基本チェックリスト

対象は原則65歳以上で要支援・要介護認定外(自立)の方です。地域包括支援センターから送付される「基本チェックリスト」で心身状態を把握し、必要なケア内容を判断します。このチェックリストは日常生活動作や閉じこもり傾向など幅広く調査し、その結果から適切なサービス利用へつなげます。

 

基本チェックリスト

番号質問内容はいいいえ
1バスや電車で1人で外出していますか01
2日用品の買物をしていますか01
3貯金の出し入れをしていますか01
4友人の家を訪ねていますか01
5家族や友人の相談にのっていますか01
6階段を手すりや壁につかまらずに昇っていますか01
7椅子に座ってから、何もつかまらずに立てますか01
815分続けて歩いていますか01
9この1年間に転んだことがありますか10
101つの事に対する不安が大きいですか10
116か月間で2~3㎏以上体重が減りましたか10
12BMIが18.5未満である10
13半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか10
14お茶や汁物などでむせることがありますか10
15口の渇きが気になりますか10
16週に1回以上は外出していますか01
17昨年と比べて外出回数が減っていますか(減った=はい)10
18周囲から物忘れがあると言われますか10
19自分で電話番号を調べ電話しますか01
20今日が何月何日かわからない時がありますか10
21(直近2週間)毎日の生活に充実感がない10
22(直近2週間)楽しめていたことが楽しめなくなった10
23(直近2週間)以前は楽にできていたことが今ではおっくう10
24(直近2週間)自分が役に立つ人間だと思えない10
25(直近2週間)わけもなく疲れた感じがする10

チェックリスト判定

  1. 運動器の機能低下に注意が必要な場合
    質問6~10の回答で「1」の合計が3点以上の場合は、筋力や関節の動きなど運動器の機能低下が疑われます。転倒や歩行困難などのリスクが高まるため、適切な運動やリハビリを検討しましょう。
  2. 低栄養状態に注意が必要な場合
    質問11・12の回答で「1」の合計が2点の場合は、食事量や栄養摂取に問題がある可能性があります。体重減少や体力低下を防ぐため、栄養バランスの改善や食事支援が必要です。
  3. 口腔機能などの低下に注意が必要な場合
    質問13~15の回答で「1」の合計が2点以上の場合は、噛む力や飲み込む力など口腔機能の衰えが考えられます。誤嚥性肺炎予防も含めて歯科受診や嚥下訓練をおすすめします。
  4. 全般的な生活機能の低下に注意が必要な場合
    質問1~20全体で「1」の合計が10点以上の場合は、身体的・精神的な生活機能全般に低下が見られる可能性があります。専門家による総合的な評価とケアプラン作成を早急に検討しましょう。
  5. 該当なし(現在は生活機能低下の心配なし)
    上記いずれにも該当しない場合は、現時点では大きな生活機能低下は見られません。健康維持と予防活動を継続していくことが望ましいです。

 

問題解決アクションプラン

  1. 地域包括支援センターへの積極的な相談促進
    高齢者本人だけでなく家族にも啓発し、「基本チェックリスト」を必ず提出するよう促す。疑問点は地域包括支援センターへ直接相談できる体制整備も重要です。
  2. 一次・二次両面から取り組む多様なプログラム整備
    ・ウォーキング教室、筋力トレーニング、生きがいづくりサロンなど多彩な選択肢提供
    ・個別評価によるオーダーメイド型二次予防プログラム実施
  3. 専門職連携による総合的ケア
    医師・理学療法士・栄養士・保健師など多職種チームによる継続的フォローアップ
  4. 地域コミュニティとの連携強化
    ボランティア育成、生涯学習講座開催、交流イベント増加で孤立感解消
  5. ICT活用による情報共有と参加促進
    スマホアプリ等で予定通知や健康管理サポート
  6. 評価と改善サイクル確立
    定期的に参加率・効果検証し、市町村ごとの課題抽出と改善策実施

 

【課題と改善策】

介護予防事業は有効ですが、多くの課題も存在します。例えば、

  • 参加率低迷
    多くの高齢者は興味不足や抵抗感から参加しないケースがあります。特に二次予防対象者には「自分は弱い」と感じさせてしまうこともあり心理的ハードルがあります。
  • 地域差・サービス格差
    市町村ごとの財政状況、人材不足から質や量に大きなばらつきがあります。過疎地ではサービス提供自体困難です。
  • 専門職不足
    理学療法士等専門スタッフ不足で十分なフォローアップが難しい現状があります。
  • 継続性確保困難
    一時的参加だけで終わってしまうケースも多いです。

これらへの対策として、

  1. 心理的抵抗感軽減策
    参加することへのメリット強調、生涯現役感覚を醸成する広報活動強化。また仲間づくり重視型プログラム設計。
  2. オンライン活用拡大
    遠隔運動教室や健康相談導入で過疎地対応、人材不足緩和
  3. ボランティア活用推進
    専門職補助として地域ボランティア育成し、多様な支援体制構築
  4. 制度柔軟化と財政支援充実
    国・自治体連携強化し資金投入拡大、市町村間格差是正へ
  5. 継続参加促進策
    定期的フォローアップ電話連絡、達成感共有イベント開催等モチベーション維持施策

これら複合的対策によって初めて真の効果ある介護予防となります。

 

【まとめ】

超高齢社会となった今、誰もが将来「寝たきり」にならず自分らしい生活を送りたいと思っています。そのためには早期から日常生活全般にわたり心身機能維持へ取り組むことが不可欠です。「介護予防事業」はその土台となる制度であり、市町村主体で多様かつ柔軟なサービス展開されています。一人ひとりの日常生活習慣改善から専門家連携まで幅広い視点で支えています。しかし課題もありますので、自分自身や家族、ご近所同士でも積極的に情報収集し活用する姿勢が重要です。本記事がお役に立ち、高齢期も明るく元気に暮らす一助になれば幸いです。

 

◆参照元一覧◆

  1. 一般介護予防事業って何?5つの事業と共に徹底解説 – ルネサンス https://rena-bg.s-re.jp/blog/68
  2. 第1章 介護予防について – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1_01.pdf
  3. 【はじめての方へ】介護予防・日常生活支援総合事業 – LIFULL 介護 https://kaigo.homes.co.jp/manual/homecare/zaitaku_service/sogo/

 

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