【高安 国世】たかやす くによ
1913~1984年 大阪府出身。歌人、ドイツ文学者。
父の高安道成は医師、母やす子はアララギの歌人。母やす子の影響を受け短歌に開眼し、京都帝国大学文学部独文科入学の年に「アララギ」入会。土屋文明に師事する。
敗戦後、関西アララギ会誌「高槻」 を創刊したり、新歌人集団にも参加し旺盛 に歌をつくりはじめる。1954(昭29) 年、「塔」を創刊する。六〇年、関西を中心とする現代歌人集会を結成し初代理事長 となる。
ドイツ文学、とりわけリルケの研究家として著名であり、多くの作品を翻訳している。
高安国世 著作
1944年『若き日のために ドイツ文学断想』七丈書院
1946年『新しき力としての文学』秋田屋
1948年『物への信頼と意志』明窗書房
1949年『トーマス・マンとリルケ』アテナ書院
1949年 歌集『真実』関西アララギ会高槻発行所
1951年 歌集『Vorfrühling』
1952年 歌集『年輪』白玉書房
1954年『リルケ』(世界名詩鑑賞)筑摩書房
1955年 歌集『夜の青葉に』白玉書房
1956年 歌論集『抒情と現実 今日の短歌明日の短歌』第二書房
1957年 歌集『砂の上の卓』白玉書房
1959年 ドイツ語訳歌集『Herbstmond』
1960年 歌文集『北極飛行』白玉書房
1961年 ドイツ語訳詞華集『Ruf der Regenpfeifer』
1962年 歌集『街上』白玉書房
1963年『万葉の歌をたずねて』創元社
1968年 歌集『虚像の鳩』白玉書房
1972年 歌集『朝から朝』白玉書房
1972年『リルケと日本人』第三文明社 レグルス文庫
1976年 歌集『新樹』白玉書房
1976年 歌論集『詩と真実』短歌新聞社
1977年 エッセー集『カスタニエンの木陰』構造社出版
1977年 エッセー集『わがリルケ』新潮社
1978年 歌集『一瞬の夏』 沖積舎
1980年 歌論集『短歌への希求』沖積舎
1981年 歌集『湖に架かる橋』 石川書房
1982年 エッセー集『詩の近代-ドイツ文学エッセイ』沖積舎
1984年 歌集『光の春』 短歌新聞社
1987年『高安国世全歌集』 沖積舎 「参考: Wikipedia」
高安国世 短歌
ありありと高貴にして孤独なるもの民衆を 愛し民衆の中より歌ふ 『真実』
くまもなく国のみじめの露はれてつひに清 らなる命恋しき
収入なき父が病む我に金を置き卵を置きて帰り行きたり
壇上に苦しき告白に陥ちて行くありありと孤独なる文学者の声
寝床の位置かへて安らぐも暫しにて今度は壁に圧迫されてゐる
ミシン踏み自信なく居る妻のうしろ何か言ひたくなりて我が佇つ
かきくらし雪ふりしきり降りしづみ我は真実を生きたかりけり 『Vorfrühling』
ひろびろと海ひらけたる岸に来て我が子はいまだ遠くをば見ず
深海の貝かすかなる眠りにて眠るときのみ貝殻育つ 『街上』
桃二つ寄りて泉に打たるるをかすかに夜の闇に見ている
鉄骨のかぎる一劃一劃に予感の如き夕映がある 『虚像の鳩』
羽ばたきの去りしおどろきの空間よただに虚像の鳩らちりばめ
広場すべて速度と変る一瞬をゆらゆらと錯覚の如く自転車
虚しきを孕みて空に立てるものすさまじき鉄骨群の静まり
笑い居し夢つぎ穂なく真夏日の熱き空気に投げ出だされつ
湖にわたすひとすじの橋はるけくて繊きしろがねの韻とならん 『湖に架かる橋』
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