【富小路禎子】知っておきたい古典~現代短歌!

千日小坊

千日小坊

富小路 禎子 (とみのこうじ よしこ)

1926~2002年 東京生まれ。歌人。

華族の家に生まれる。富小路家は歌道の家の流れを汲む子爵家。父、富小路隆直は元貴族院議員。太平洋戦争以後は父の失職などにより没落し、旅館の女中などを経て日東化学工業(現三菱レイヨン)に勤務、定年まで勤める。 

女子学習院高等科卒。在学中に学科として尾上柴舟の指導を受け、植松寿樹に師事。1946年「沃野」創刊より参加、 後に発行責任者。戦後の混乱のなかで苦難と孤独の青春を詠嘆した歌で知られた。 

1956(昭3)年の第一歌集『未明のしらべ』は、戦後の焼け跡に 無援に立つ、旧華族の若い女性の凜々しい苦闘の歌として評価された。一貫して時代の激変に拮抗しつつ、一人生きる心の跡を詠み、独自性を示す。引用歌には若い日の禁欲的心情と、時代の批判的イメー ジが示されている。

富小路 禎子 著作

  • 1956年 「歌集」『未明のしらべ 』  短歌新聞社
  • 1970年  はくぎょう  新星書房
  • 1976年 「歌集」『透明界』 角川書店
  • 1983年 「歌集」『柘榴の宿』   短歌新聞社
  • 1989年 「歌集」『花をうつ雷』  短歌新聞社
  • 1993年 「歌集」『吹雪の舞』  雁書館
  • 1996年 「歌集」『不穏の華』  砂子屋書房
  • 2002年 「歌集」『芥子と孔雀』   短歌研究社
  • 2002年 「歌集」 遠き茜    短歌新聞社
  • 2003年 「歌集」『富小路禎子全歌集』    角川書店

〈参考 フリー百科事典〉

富小路 禎子 短歌

雨風に晒されありし卵殻に触るれば脆し生命の器 『未明のしらべ』

処女にて身に深く持つ浄きらん秋の日吾の心熱くす

女にて生まざることも罪の如しひそかにものの種乾くとき

今日一日心くるしみゐし吾の頬伝ふまで目薬をさす

越えがたく流に立つに手を貸さぬ君が当惑まどひおもて清しむ

鮭のはらみし卵盛りたる白き皿へこころするどくなりて吾は向く

父とと争へば長き夜となり明るき卓に貨幣が光る

つまあらばかくうたはんと思ふ歌しばし惜しみてやがて忘れき

陶片を盛り上げし冷え人の屍に触りたる冷えの顕ちてあぢさゐ

人間になき行為にて白き白き卵を抱けるとりすがしむ

一心に釘打つ音を後より見るなかれ背は暗きのっぺらぼう 『白暁』

自動エレベーターのボタン押す手がふと迷ふ真実ゆきたき階などあらず

真昼間烏賊く吾の虚を衝きてその腹を出づ透きし軟骨

白粥に籠る命を戴くと十日ぶりなる食事つ つしむ 『不穏の華』

線香花火の脆き火、夜空の焼夷弾、父母焼く火、昭和のあの人この火よ

血の色の空にうかびて苦しめり日本列島に似たる黒雲

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