【福島 泰樹】『22選』 知っておきたい古典~現代短歌!

水仙

水仙

福島 泰樹 (ふくしま やすき)

1943年 東京生まれ。 僧侶、歌人、朗読家、ナレーター。 

早稲田大学西洋哲学科卒。同大学在学中に早稲田大学短歌会に入会。法昌寺住職にして絶叫コンサートのミュージシャン。早稲田闘争を テーマとする歌集『バリケード・一九六六年二月』を刊行。「心の花」を経て、1987年~現在「月光の会」主宰。

福島 泰樹 著作

1969年 『バリケード・一九六六年二月』 新星書房

1972年 『エチカ・一九六九年以降』 構造社

1974年 『昨秋挽歌』 草風社

1976年 『転調哀傷歌』 国文社

1976年 『風に献ず』 国文社

1978年 『退嬰的恋歌に寄せて』 沖積舎

1981年 『夕暮』 砂子屋書房

1983年 『中也断唱』 思潮社

1984年 『月光』 雁書館

1984年 『望郷』 思潮社

1986年 『妖精伝』 砂子屋書房

1986年 『中也断唱 続 坊や』 思潮社

1988年 『柘榴盃の歌』 思潮社

1989年 『蒼天 美空ひばり』 デンバー・プランニング

1989年 『無頼の墓』 筑摩書房

1990年 『さらばわが友』 思潮社

1994年 『愛しき山河よ』 山と渓谷社

1995年 『黒時雨の歌』 洋々社

1996年 『賢治幻想』 洋々社

2000年 『茫漠山日誌』 洋々社

2000年 『朔太郎、感傷』 河出書房新社

2003年 『葬送の歌』 河出書房新社

2003年 『デカダン村山槐多』 鳥影社

2004年 『山河慟哭の歌―人は生まれ、そして死ぬ』 佼成出版社

2004年 『月光忘語録』 砂子屋書房

2005年 『青天』 思潮社

2008年 『無聊庵日誌』 角川学芸出版

2010年 『完本 中也断唱』 思潮社

2012年 『血と雨の歌』 思潮社

2013年 『焼跡ノ歌』 砂子屋書房

2015年 『空襲ノ歌』 砂子屋書房

2016年 『哀悼』 皓星社

2017年 『下谷風煙録 』 皓星社

2018年 『うたで描くエポック 大正行進曲』 現代短歌社

福島 泰樹 短歌

あまつさえ時雨はさびしきものなるをコーヒー店に待機している 『バリケード・一九六六年二月』

永遠に空翔けることなきものとわかものの胸 鷹の徽章ワッペン

革命の疾風怒濤旗をふる樽見! 論理を美しく研ぐ

機動隊去りしキャムパス ああここに留年をする六○○の靴

機動隊去りたるのちになお握るこの石凍てし路面をたたく  

ここよりは先へゆけないぼくのため左折してゆけ省線電車  

鯖のごとくカブト光れり われ叛逆すゆえにわれあれ存在理由レーゾン・デートル

三月のさくら 四月の水仙も咲くなよ永遠とわの越冬者たれ 

樽見、君の肩に霜ふれ 眠らざる視界はるけく火群ゆらぐを 

電柱にはかなかりけり肉筆のビラ 敗走をつげよ突風 

二日酔いの無念極まるぼくのためもっと電車よ まじめに走れ

椿

椿

ポスターカラーよりあかかりし総長の舌 占拠せる不眠のまなこ  

寒村の寺の男として死すやこころ騒ぎて帰ろとおもう 『晩秋挽歌』

さくら咲き桜の下に雫する四月の雨は血しぶきならぬ

椿咲く極寒の朝ぐいぐいと悔い悔いとのむ飲めば傷いたしも

ヒマラヤへゆきたしあわれ雪渓を峰を越えゆく鳥に知らゆな

今日ここに杏子の花のはなふぶき嘘くれないに散ってゆくまで 『転調哀傷歌』

女ひとり殺せぬおれに六月の雨は不憫にワイシャツ濡らす 『退嬰的恋歌に寄せて』

機動隊よそこに尿いばりをするなかれおれがオフェリア抱いたところ  

死んだつていいようとく魂をいたわりながら黎明を待つ 『中也断唱』

吹き上がる鯉幟にさえ背を向けてかもめの唄をうたわんとする 『望郷』

直截ちょくさいに剣の如く生きたきを濛々もうもうとしてわれ溶鉱炉 『愛しき山河よ』

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