【桜の歌】古典から現代短歌。『15選』

桜

さくら

サクラは、バラ科サクラ亜科サクラ属落葉広葉樹で、日本人の精神、文化で大きな位置を占める代表な花です。

桜は春の象徴として、和歌俳句をはじめ文学、芸術全般において非常によく使われており、多くの音楽、文化作品が生み出されています。

古来から農事の吉凶を占う花として、稲作神事に関連していたともされ、非常に大切なものでした。また、桜の開花は、他の自然現象と並び、農業開始の指標とされた場合もあるようです。

奈良時代の『万葉集』には、桜を含む様々な植物が登場しますが、当時は中国文化の影響が強く、和歌などで「花」といえばを指していました。それを裏づけるように、 歌われた桜の多くは、山野に自生するものでした。『万葉集』においては梅の歌118首。対して桜の歌は44首に過ぎません。2019年5月1日からの元号である『令和』も万葉集にある梅花の宴が典拠となっています。

サクラの地位が特別なものとなったのは平安時代であり、『古今和歌集』では都の花として時めくようになり、徐々に桜の人気が高まり春の「花」と言えば桜を指すようになりました。

 

桜の短歌(和歌)

年ふればよはひは老いぬしかはあれど花をし見れば物おもひもなし 藤原良房

世中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけからまし 在原業平

花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに 小野小町 

さくら花ちりぬるかぜのなごりには水なき空に浪ぞたちける 紀貫之

後世ごせは猶今生こんじゃうだにも願はざるわがふところにさくら来てちる 山川登美子

いやはてに鬱金うこんざくらのかなしみのちりそめぬれば五月はきたる 北原白秋

うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山桜花やまざくらばな 若山牧水

桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命をかけてわが眺めたり 岡本かの子

ふぶきくる桜のもとに思ふこと押しなべて暗したたかひの惨 岡野弘彦

さくら花幾春かけて老いゆかん身に水流の音ひびくなり 馬場あき子

雨の谿間たにまの小学校の桜花昭和一けたなみだぐましも 岡井隆

さくらばな陽に泡立つを目守りゐるこの冥き遊星に人と生れて 山中智恵子

サンチョ・パンサ思ひつつ来て何かかなしサンチョ・パンサは降る花見上ぐ 成瀬有

あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ 永井陽子

夜ざくらを見つつ思ほゆ人の世に暗くただ一つある〈非常口〉 高野公彦

 

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