【感想】『最貧困女子』若年女性の孤立と見えない痛みの真実とは?

最貧困女子

poorest girl

現代日本で働く単身女性の約3分の1が、年収114万円未満という現実。特に10〜20代の困窮は「貧困女子」という言葉で語られますが、その最下層には、家族・地域・制度という「3つの縁」*を失い、セックスワーク(性風俗)でしか生きられない「最貧困女子」たちがいます。

本書『最貧困女子』(鈴木大介著)は、著者がフィールドワークを通じて彼女たちの生の声を聞き取り、可視化されにくい苦しみと、それを生む社会構造を浮き彫りにした一冊です。なぜ彼女たちは「助けて」と言えないのか。

この記事で学べること:

  • 若年女性の貧困が抱える「多重の孤立」というリアル

  • なぜ「セックスワーク」が最後のセーフティネットになるのか

  • 家族・地域・制度からこぼれ落ちる社会構造の問題

  • 「助けて」と言える人と、放置される人の残酷な境界線

  • 私たちが「見えない痛み」に寄り添うために必要な視点

 

【本文から気になった箇所】

① 「教育」を奪われた者が、最後に差し出す「身体」

デリヘル店の店長の言葉で、ユダヤ人と夜の街で働く女性を比較する視点は非常に衝撃的です。迫害の歴史から「知識(教育)」という奪われない財産を重視したユダヤ人に対し、教育の機会を奪われた女性たちは、「女であること(身体性)」を奪われない最後の財産として生き抜く武器にします。身体を切り売りせざるを得ない悲哀と、それ以外に手段を持てない教育格差の残酷さが浮き彫りになります。

② 「いい彼氏」が唯一の行政への架け橋という歪み

家出少女たちが行政や福祉から断絶されている中で、「いい彼氏」と同棲し結婚や出産することが唯一行政との接点回復になるという指摘も非常に考えさせられました。恋愛や結婚への渇望は単なる依存ではなく、孤立した生活から抜け出すための必死なサバイバル行動なのです。行政や福祉の手が届かない孤立した少女たちにとって、「いい彼氏」と同棲し、結婚・出産することが唯一の「社会復帰(行政との接点)」になるという指摘。恋愛や依存は単なる感情の問題ではなく、法制度から見捨てられた彼女たちの必死なサバイバル戦略なのです。

③ 「助けてと言えない人」が切り捨てられる残酷な現実

「助けてください」と言える人と言えない人、見た目で助けたくなるかどうかで痛みが放置される残酷さ。この現実こそが日本社会に広がる最大級の問題だと著者は訴えます。「助けて」と言えるコミュニケーション能力があるか、あるいは「助けてあげたい」と思われる外見をしているか。そんな本人の資質によって救済の可否が決まってしまう現状を、著者は強く批判します。「見えにくい痛み」ほど深刻であり、その声なき声に耳を傾けること

【まとめ】

『最貧困女子』は単なる経済的貧困論ではなく、社会的孤立と制度的不備によって追い詰められた若い女性たちの「生きる」現場をリアルに描いた力作です。彼女たちが抱える苦しみは私たちの日常とはかけ離れているようでいて、決して他人事ではありません。家族や地域、そして社会保障制度という縁が失われた時、人はどこへ向かうのか。本書はその問いに真正面から向き合い、「最貧困女子」という言葉以上に深刻な問題提起となっています。

 

◆参照元一覧◆

  1. 幻冬舎 『最貧困女子』 鈴木大介 https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344983618/
  2. 朝日新聞書評「鈴木大介『最貧困女子』」 https://book.asahi.com/article/11607983
  3. note「最貧困女子』感想」 https://note.com/forcetrustjapan/n/n86fd6a783d98

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