【感想】『億までの人 億からの人』で学ぶ究極の習慣化

朝のルーティン

朝のルーティン

今回ご紹介するのは、田中渓(たなか けい)氏の著書『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(徳間書店)です。今回は家事や移動中、作業の隙間時間を有効活用するために、Audible(オーディブル)を利用して耳からの読書として体験しました。

著者の田中渓氏は、世界最高峰の金融機関であるゴールドマン・サックスで17年間投資の第一線を走り続け、なんと1.2兆円もの資産を動かしてきたという、文字通りの「超人」です。在籍中には20カ国以上、300人を超える「億円」「兆円」単位の資産家や海外の王族といった超富裕層と交流し、彼らに共通する思考や行動原理を間近で観察してきました。

本書は、具体的な銘柄を勧めるような小手先の「投資術の本」ではありません。今どのような環境に置かれている人であっても、思考をシフトすることで人生のステージを引き上げることができる「富裕層マインド(兆人のマインド)」を学ぶための指南書です。

(衝撃の「3時45分起床」と思考の完全排除) この本を聴いて、私が最も心に突き刺さった、いや、雷に打たれたような衝撃を受けたのは「習慣化が全て」という事実です。

著者の田中氏自身が実践しているルーティンは、毎朝「3時45分」に起床し、起きてからわずか10分後には家を出ます。そして、ランニング25キロ、自転車(バイク)60〜70キロ、あるいは水泳7000〜9000メートルのいずれかを必ずこなすというのです。フルマラソンの半分以上の距離を、朝飯前に走るわけです。しかもこれを、出張先でも旅行先でも、雨の日も雪の日も一切の例外なく継続しています。

しかし、ここで重要なのは「激しい運動をしているからすごい」ということではありません。田中氏が強調しているのは「脳に言い訳をする隙を与えない仕組み作り」です。

朝3時45分にアラームが鳴った時、「今日は少し寒いな」「体が重いな」と一瞬でも思考を許してしまえば、人間は必ず「やらない理由」を見つけ出します。だからこそ、ロボットのように無心で準備をし、思考を挟まずに家を出る。「やるか、やらないか」の選択肢を自分の中から完全に排除する。この「0秒の決断」による圧倒的な習慣化こそが、冷徹で正確な判断が求められる1.2兆円の投資の世界を生き抜くための土台になっているのです。

18年間の新聞配達との深い共鳴

私は自分のこれまでの人生、特に「18年間続けてきた新聞配達」の経験を深く重ね合わせていました。

実を言えば、私が副業として新聞配達を始めた当初は、決して前向きなものではありませんでした。日々の生活のため、半ば「嫌々」スタートしたのが正直なところです。当時の私は、何事に対しても場当たり的で、その日暮らしの動きしか持ち合わせていませんでした。

しかし、新聞配達という仕事は、雨が降ろうが雪が降ろうが、休むことは許されません。この絶対に逃げられない過酷な環境が、結果的に私を根本から作り変えてくれました。 毎朝確実に配達を終え、スムーズに一日を始めるためにはどうすればいいか。導き出した答えは「前夜の完璧な準備」でした。明日の天気をチェックし、着るものから持ち物まで、寝る前にすべてセットしておく。朝起きたら、何も考えずにそれに着替えて外に出る。まさに田中氏が説く「思考の排除」と「仕組み化」を、私は日々の配達業務の中で、無意識のうちに身につけていたのです。

「惰性」の打破と、多忙な日々を支える柱

この「朝、必ず起きる」という強固なマインドセットは、私の人生において計り知れない恩恵をもたらしてくれました。一番大きかったのは、自分の中にあった「惰性」という重い殻を完全に脱ぎ捨てることができた点です。

私はこの18年の間、子育てに直面してきました。子供の成長に伴う様々な出来事(時には学校との書類のやり取りなど、予期せぬトラブルへの対応も含みます)や、本業の仕事、そして副業。これらをすべて破綻させずにこなすことができたのは、間違いなく「朝の規律」があったからです。

朝の静寂の中で体を動かし、ルーティンをこなしている時間は、私にとって単なる労働ではありません。それは、一日をデザインするための「究極の作戦会議」の時間なのです。 配達の足取りとともに、脳は急速に活性化し、頭の中が驚くほどクリアに整理されていきます。「今日は子供のことであれを済ませよう」「本業の段取りはあの順番でいこう」といった複雑なスケジュールが、パズルのピースがはまるように整っていくのです。

小さな成功体験の積み重ねと「勝ち癖」

習慣化の話題と並んで、本書で非常に感銘を受けたのが「勝ち癖」をつけるという考え方です。富裕層は、投資利益率(ROI)を常に意識して行動を選択しています。しかしそれは、単にお金が儲かるかどうかということだけではありません。「これをやれば、確実に達成できる」という小さな目標を日常の中に設定し、それをクリアすることで「自分はできる」という自己肯定感を育てているのです。

私の新聞配達の例で言えば、「前夜に準備をした通りに、時間通りに配り終える」という毎日のルーティン自体が、一つの小さな成功体験です。最初は嫌々だったとしても、雨の日も雪の日もやり遂げたという事実が積み重なることで、「どんな悪天候でも自分はやり切った」という強烈な自信、すなわち「勝ち癖」に変わっていきました。

私が現在、趣味と実益を兼ねて写真撮影やAIを活用したイラスト制作を行い、数千枚もの作品をストックフォトサイトにコツコツとアップロードし続けることができているのも、根底には「毎日少しずつでもやれば、必ず形になる」という自信があるからです。 朝の習慣によって完璧に整理された状態の脳であれば、写真の選定も、ブログの文章構成も、驚異的なスピードとクオリティで進めることができます。田中氏が「朝の活動が脳を劇的に活性化させる」と語っているのを聴いた時、私が長年培ってきた「最大の武器」は、まさにこれだったのだと、深い納得に包まれました。

おわりに 凡人が超人に近づくための第一歩

1.2兆円を動かす超一流の投資家と、毎朝新聞を配り、写真を撮り、ブログを書いている私。住む世界も動かすお金の桁も全く違いますが、人生をより良く生きるための「エンジン」の構造は同じだったのだと気づかせてくれた本書に、心から感謝しています。

Audibleで聴くことで、田中氏の哲学がよりリアルな音声として頭に響き、日々の家事や移動の時間が極上の学びに変わりました。 もしあなたが今、「毎日が同じことの繰り返しでつまらない」「変わりたいけれど、どうすればいいか分からない」「つい惰性で時間を無駄にしてしまう」と悩んでいるなら、ぜひこの『億までの人 億からの人』を手に取って、あるいはAudibleで聴いてみてください。

そして、明日からではなく、「今日の夜」から、明日の朝のための準備を始めてみましょう。思考を排除して動き出すその小さな一歩の積み重ねが、やがてあなたの人生を「億」の価値があるものに変えてくれるはずです。私自身も、この本から得た刺激を胸に、明日からの朝のルーティンをより一層研ぎ澄ませていきたいと思います。

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