貧困と脳 「働かない」のではなく「働けない」筆者『鈴木大介』
貧困当事者が抱える問題を単なる「自己責任」として片付ける社会の見方に疑問を投げかけています。著者は長年にわたり、貧困層の人々が約束を守れなかったり、遅刻を繰り返したり、だらしなさが目立つ行動の背後に、脳が何らかの影響があることに気づきました。本人の努力だけでは克服できず、やるべきことがうまくできない「生き地獄」のような状態です。貧困当事者を自責や自罰から解放し、適切な支援を行う重要性を訴えています。つまり、「働けない脳」が原因である場合も多く、「自己責任論」による非難は誤りであると主張し、社会的理解と支援の必要性を強調しています。
この記事を読むことで得られること
本記事を通じて、「貧困=自己責任」という誤った固定観念から脱却し、貧困当事者が抱える根深い問題に気づくことができます。また、著者自身の体験から得た支援の在り方や、言語聴覚士との出会いによって救われたエピソードは、多くの支援者や家族にとって大切な示唆となります。
【本から得た気づき】
第7章では、「話しづらい」という訴えを真摯に受け止めてくれた言語聴覚士との出会いが描かれています。著者はこれまで、自分のコミュニケーションの困難さについて弁解や言い訳として扱われることが多かったと感じていました。しかし、この言語聴覚士は、脳検査や過去のデータ、他者との比較に頼ることなく、「話しづらさ」という本人の主観的苦痛に直接着目しました。
【感想】
この章で印象的だったのは、「話しづらさ」を単なる症状として扱わず、その苦しみを共感し改善策を一緒に考えてくれた専門家への感謝です。著者自身も、この姿勢こそがあらゆる支援の基盤であり、支援職だけでなく家族や周囲にも求めたい心構えだと強調しています。この考え方には私も深く共感しました。
【まとめ】
「自己責任」という言葉だけで片付けてはいけない真実
本書は、貧困問題を「甘え」や「サボり」といった自己責任論で切り捨ててきた社会に対し、大きな警鐘を鳴らす一冊です。鈴木大介氏は長年、「最貧困女子」と呼ばれる当事者たちへの取材を続けてきました。彼らには「約束破り」「遅刻」「片付け不能」といった特徴がありますが、多くの場合世間から「だらしない」と非難されます。しかし著者自身が脳梗塞による高次脳機能障害になったことで、それまで理解できなかった事態が一変します。
どんなに努力しても「普通」のことすらできない生き地獄。それこそが高次脳機能障害によるものだったのです。そして著者は、自身も取材対象も同じような「働けない脳(不自由な脳)」によって苦しんでいた可能性に気づきます。
支援の原点:第7章「言語聴覚士との出会い」
特に印象深い第7章では、著者が最も救われた言語聴覚士とのエピソードがあります。その専門家は検査数値や過去データ、人との比較など外部基準には頼らず、ただ純粋に本人の訴える「話しづらさ」を受け止めました。コミュニケーション困難という本人の主観的苦痛への真摯な理解と改善への取り組みこそが、本書最大のメッセージと言えます。
私たちが持つべきマインド
著者はこの姿勢こそ「あらゆる支援の基本」であると断言しています。
- 相手の困難を外部基準で否定せず尊重する
- 本人が感じている苦痛へ寄り添い解決策を共に探る
これは専門職だけでなく家族や友人など周囲全体にも求められる心構えです。「自己責任」という冷たい言葉で突き放す代わりに、その背後にある「脳機能障害」を理解する社会的寛容さこそ今求められていると言えるでしょう。


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