稲盛和夫『どう生きるか なぜ生きるか』感謝と因果応報の人生哲学

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『どう生きるか なぜ生きるか』を深読

稲盛和夫さんの『どう生きるか なぜ生きるか』について、心に残った部分と自分自身の気づきを交え、率直に感想をまとめてみたいと思います。この本を手に取ったのは、人生をより良く生きるヒントが欲しかったから。その期待通り、稲盛さんの言葉は実に力強く、私のなかの迷いや不安にやさしく、しかし厳しく響きました。

本書は、稲盛和夫さん自身の人生観や成功哲学、そして日常生活でどう心を持つべきかを丁寧に説いたもので、多くの人の「これから」を勇気づけるメッセージに満ちています。読み返せば読み返すほど、その深さに気づかされる一冊です。

◆ あらすじ

稲盛和夫さんといえば、京セラやKDDIという大企業をゼロから育て上げた名実ともに一流の経営者として知られています。著書『どう生きるか なぜ生きるか』でも、自身の実体験を踏まえつつ、人生をより良く生きるため、成長し続けるために私たちが具体的にどう考え、どう行動するべきかを具体的に語っています。本書の中心にあるのは「思念」「因果応報」「感謝」「地道な努力」という4つの実践的なテーマです。

本は小難しい理論書ではなく、稲盛さんご自身の言葉そのままで綴られており、人生で迷ったり、何か壁にぶつかったときにそっと背中を押してくれる一冊です。

◆ 印象に残った本文とその感想

●『人生の横軸には、この因果応報の法則があるわけです。この「因」とは、生きている間に自分自身が思ったこと、考えたこと、そして実行したことです。私はこれを、「思念」というふうにいいました。思念は業(カルマ)をつくる。我々は「思っただけやないか」というふうに思いますが、そんな軽いことではない。実はその思ったことが原因をつくってしまうのです。恨み、つらみ、いろんなことを考えただけで、もう原因をつくってしまうのです。その原因は、必ず「結果」を生みます。』

これを読んだとき、「まさにそうだな」と思いました。私自身、思ったことが現実になるような経験はこれまでにも何度もありました。たとえば「自分は絶対に成功する」と思い込んで努力を重ねたとき、不思議と話がうまくまとまったり、信頼できる人と出会えたりしたこともあります。その一方で、心のどこかで「どうせ無理だ」と思ってやっていたときは、やっぱりうまくいかないことが多かった気がします。つまり、「思っただけ」でも何かの流れを生み出してしまう。
ただ、この思いが弱いと、なかなか形にならないことも実感しています。ですから、稲盛さんが仰る「思いの強さ」「信念を強く持つこと」の大切さを、これからますます意識していきたいと思いました。

●『私はこれについて次のように考えていました。この因果応報の結果というのはすぐに出ることもあるだろうが、なかなかすぐには出てこない。しかし、二十年、三十年というスパンで人生を長くみれば、必ずそのとおりになっています。だから、二年や三年では結果は出てこないかもしれませんが、自分の一生の間と考え、二十年、三十年というスパンで考えれば、よいことを思い、よいことをすれば、よい結果が生まれるし、悪いことを思い、悪いことをすれば、悪い結果が生まれる。それはもうハッキリしているのです。』

多くの人が「今、頑張っても無駄なんじゃないか」「努力しても報われないんじゃないか」と感じてしまうことがあると思います。私自身も、日々コツコツと働き、積み重ねていることが、目に見えた大きな変化になっていないように思えて、不安になることがあります。しかし、人生は20年、30年という長い目で見たとき、今の積み重ねが自分をつくる。やがて「こんなに変われたんだ」と実感する日が来る。逆に、油断してサボってしまえば、一瞬で元通りになってしまうこともある。
だからこそ、一喜一憂せず、今この瞬間を大切にコツコツと積み重ねていくしかないのだと思います。自分自身を律して、地道に続けることでしか大きな結果を手に入れることはできない、という稲盛さんの言葉がずしりと胸に響きます。

 

◆「感謝の心」で運命に向き合うこと

●『波漏万丈の人生をいかに生きるか。そういうことがなぜ起こってくるのかは、先ほど二つの法則によるのだと申し上げましたが、そのような現象が起こってきたときに、日々どのように対処をしていくかということが、非常に大事なのです。その答えはもうハッキリしています。すなわち、よいことに出会おうとも、悪いことに出会おうとも、どんな運命に出会っても、出会った運命に感謝する心で対応するということです。これはたいへん難しいことです。』

若い頃には正直、「感謝しなさい」と言われても、なかなかその本当の意味が分かりませんでした。しかし、年齢を重ね、さまざまな経験をしてきた今になって、身近な人へのありがたみや、小さな出来事への感謝の気持ちが、何より人生を豊かにしてくれると実感します。物事が思い通りに行かない時、大きなトラブルに見舞われた時ほど、「これはきっと自分に必要な課題なのだ」と受け止め、周囲の支えや出会いに感謝することで、正しい心で過ごせる気がします。
もっと若い時にこのことをしっかり身につけておけば…と少し後悔もありますが、今日からでも遅くはない。身の回りの人や日常の中に感謝を見つける習慣を続けていきたいと思いました。

◆「一生懸命働くことでしか心は磨けない」

最後に、稲盛さんが繰り返し語る「働くこと」の大切さを心に留めておきたいと思います。

●『一介の農民であり、作法を教わったこともない男の立ち居振る舞い、物腰、しゃべり方が、どこの出だろうかと思われるぐらいに礼儀正しくすばらしいものであったというのです。朝から晩まで働や鎌を持って田地畑で働いた二宮尊徳の例は、その労働がどのように心を磨いていったのかの証明になるわけです。 つまり、一生懸命に働くことによってしか心を磨くことはできない。私はそう思っています。』

これはとても共感できました。本当の「品」や「風格」はお金や地位では買えません。苦労をしっかり乗り越えた人には、それが自然と身につくのだと思います。現代は効率やスマートさが重視されがちですが、どんな時代でも「誠実に働く」ことの大切さは変わらないのでしょう。働くことで人は磨かれ、やがてそれが人格となって現れる…稲盛さんの考えは、時を超えて私たちに勇気を与えてくれます。

◆まとめ

『どう生きるか なぜ生きるか』は、人生に悩んだとき、迷いが生じたときに必ず手に取りたい一冊です。稲盛和夫さんが語る「思ったことが現実になる」という因果応報の法則は、日々の小さな積み重ねがやがて大きな結果になると教えてくれます。そして、良いことにも悪いことにも感謝を持つことで、心が正しくなり、運命も味方してくれるように感じられます。
一生懸命に生きること、働くことでしか心は磨けない。そして信念を強く持ち、感謝の心を忘れずに過ごすことで、誰もが「自分の人生を自信を持って生きる」ことができるのだと教えてもらいました。

この本を通じて、今この瞬間からでも人生を変えられるのだと思えたことが、何よりの収穫でした。もし、人生に答えを探しているあなたがいれば、ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。

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