煙草・莨
タバコはポルトガル語に由来し、16世紀に九州へ伝わった試行品です。タバコの火は、日常生活で使われる火の中でも最も小さく、実用的な用途がない特殊な火として知られています。古くから、タバコは酒と同じように心を癒す手軽な嗜好品として愛されてきました。そのため、タバコを吸う仕草や背景、味、匂いといった細やかな描写が、吸っている人の心情やその場の雰囲気を表す手がかりになることもあります。
タバコは文学の世界でも題材に取り上げられることがあり、特に短歌においてもその象徴的な意味がしばしば描かれます。タバコを吸う仕草やその火をくわえる行動が、疲れた心や孤独を表現する詩的な要素として使われることが多いのです。しかし、すべてのタバコに関する描写が短歌として活かされているわけではありません。中には、意図的に避けられている側面もあります。
タバコの中毒性については以前から知られていましたが、短歌の中ではあまり取り上げられてきませんでした。しかし、近年ではタバコの発がん性も広く認識され、社会全体でタバコが迷惑な習慣と見なされるようになり、喫煙に対する考え方が大きく変わってきました。このような現実の変化が、詩的な表現としてのタバコにどのように影響を与えるのかという点も興味深いです。タバコが持つ慰めや癒しの側面だけでなく、不快さや有害性が短歌の中でどのように描かれるか、その変化の過程にも注目が集まっています。
このように、タバコは歴史的な背景や文化的な意味合いを持つ一方で、社会の変化とともにそのイメージも変わりつつあります。短歌や文学においても、その象徴的な役割が今後どのように発展するのかが見どころです。
煙草・莨の短歌
氷きるをとこ口のたばこの火赤かりければ見て走りたり 斎藤茂吉
巻煙草口にくはえて/浪あらき/磯の夜霧に立ちし女よ 石川啄木
煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし 寺山修司
吸ひさしの煙草で北を指すときの北暗ければ望郷ならず 寺山修司
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