【村木 道彦】『20選』 知っておきたい古典~現代短歌!

タンポポ

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村木 道彦 (むらき みちひこ)

1942年 東京生まれ。 歌人。

1965年に、『ジュルナール律』掲載の「緋の椅子」連作10首で、中井英夫、塚本邦雄らの激賞を受け、歌壇にデビュー。仮名文字の多用、鋭くも優しい独特な感性、政治的な時代にノンポリティカルでありつづけた。佐佐木幸綱より少し遅れて登場した世代を代表する一人。1974年、歌集『天唇』を刊行。その後、長い作歌中断する。

村木 道彦 歌集

1974年 歌集『天唇』

1979年 『村木道彦歌集』

村木 道彦 短歌

「愛恋」と「生死」「わかもの」さわやかなことばえ立つ 真夏 芝にて 『天唇』

秋いたるおもいさみしくみずにあらうくちびるの熱 口中の熱  

いそぐべきなにもなきゆゑ ひたはしりわれはいそぎてゐるゆふまぐれ

屋上にうみがみえるといいながら階段おりてくる どなたか 

月面にあしが降り立つそのときもわれらは愛し愛されたきを  

失恋の〈われ〉をしばらく刑に処す アイス クリームちという刑  

すてしこと それよりにがきすてられしこともあんずの花さけるころ  

スペアミント・ガムを噛みつつわかものがセックスというときのはやくち  

たんぽぽの黄をきざみたるごとき陽よときにばからしくなる人生は  

つつぬけの天のふかみのあさみどりわれらはひくくひと恋いわたる  

杏 あんず

杏 あんず

ディンギー級ヨットまなべば孤独ひとりなるわがせいしゅんのほばしらはみよ

なにとなくあやむるこころわきいずるひなかひぐれのごときひととき  

ふかづめの手をポケットにづんといれ みつのしたたるやうなゆふぐれ 

我前まえに立つ すなわち赤いブラウスのそれでいてあなた はずかしがりや  

水風呂にみずみちたればとっぷりとくれてうたえるただ麦畑  

めをほそめみるものなべてあやうきか あやうし緋色の一脚の椅子  

ややよごれているガラスごしみはるかす金のむぎばた 銀の憂愁

ゆうやみはさながら蒼きレントゲンどうしようもなく病めるたましい  

頸ながき少女らなれば日は時は鬱金うこんのひかりゆたかにながる (歌集未収録)

なかんずくとりとめもなき白昼ひるなればおお無残なれそらは神の眼

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