家
家は人が生まれ育った故郷であると同時に、人によっては帰りたくない家でもあったりする。いわゆる家の捉え方も様々だ。
風土としてみれば情緒もあるが、継ぎ守るべき呪縛から脱出を思うこともあるだろう。
近代以降の家は、建物であり、家庭である、家長を中心とした共同体であり、祖先から伝え継がれる血族でもある。
家の歌を集めてみました。
家 短歌(和歌)
籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち この岡に 菜摘ます児 家告らな 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて 我こそ居れ しきなべて 我こそいませ 我こそば 告らめ 家をも名をも 雄略天皇
父死ぬる家にはらから集りておそ午時に塩鮭を焼く 土屋文明
ぶだう吞む口ひらくときこの家の過去世の人ら我を見つむる 高野公彦
家々に釘の芽しずみ神御衣のごとくひろがる桜花かな 大滝和子
海恋し潮の遠鳴りかぞへては少女となりし父母の家 与謝野晶子
人みなが家を持つてふかなしみよ/墓に入るごとく/かへりて眠る 石川啄木
丸き家三角の家などの入りまじるむちやくちやの世が今に来るべし 前川佐美雄
なめくぢのしきり湧く日本の家にゐて土乾きゆく大陸をおもふ 宮柊二
鵙の巣を日が洩れておりわれすでに怖れてありし家欲りはじむ 寺山修司
妹を呼びかえす声父よりも鋭し日本の〈家〉の奥から 岡井隆
自転車で〈不幸〉を探しにゆく少年日は暮れてどの道もどの道もわが家へ 高柳蕗子
新しき家が建ち家家が建ち、しかもそのすべての家が燃え 石井辰彦
家のうち鍋などさげてゆきかへるゆふぐれにきく秋雨の音 三ヶ島葭子
冬の斧たてかけてある壁にさし陽は強まれり家継ぐべしや 寺山修司
父の家の障子張り替ふ裸なる桟はうつくし若き父見ゆ 米川千嘉子
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