プリムラオブコニカ
窪田章一郎(くぼたしょういちろう)
1908~2001年 東京生まれ。歌人、国文学者。窪田空穂の長男。
早稲田大学講師、教授、名誉教授を歴任。「まひる野」を創刊。民衆詩としての短歌を現代に生かすことを提唱し、多くの歌人を育てた。歌集は『六月の海』『雪解の土』『定型の土俵』など、『窪田空穂の短歌』など研究著書も多く、国文学者として『西行研究』がある。
一等兵窪田茂二郎いづこなりや戦敗れて行方しらずも 『ちまたの響き』
門の戸の開く音きけば胸痛くわれは衝かるる汝れや帰ると
木の下の芝生すずしく学生にまじり横たはる幾年ぶりぞ
シベリヤの捕虜の臨終は想像をこえて知り得ず知らざるがよき
ちかぢかと夜空の雲にこもりたる巷のひびき春ならむとす 『六月の海』
抱かるる写真のわれよはろばろと母の齢をこえて今あり 『雪解の土』
聞けよとぞ妻をしへにし鶯の今年の声はわれひとり待つ 『薔薇の苗』
手をのべてわが手とらしぬ今に知る末期の別れしたまひしなり『硝子戸の外』
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