【薔薇の短歌】『41選』知っておきたい古典~現代短歌!

薔薇

薔薇

薔薇について

はじめに
「バラの無い庭園は、庭園ではない」という言葉があるほど、バラは世界中で愛される花の代表格です。その歴史は人類の文明とともに歩み、様々な文化や伝説を生み出してきました。今回は、そんなバラの魅力的な物語をご紹介します。

驚きの起源と進化
バラの歴史は、なんと6000万年前にまで遡ります。化石記録によると、現代のバラに似た植物が白亜紀末期には既に存在していたことが分かっています。これは恐竜と同時代を生きていたということになります!

興味深いことに、バラは北半球の温帯域にしか自生していません。南半球には野生のバラは一切存在しないのです。この不思議な分布は、大陸移動と氷河期の影響によるものと考えられています。

古代文明とバラ
古代エジプトでは、紀元前3000年頃からバラが栽培されていました。クレオパトラは、マルクス・アントニウスとの謁見の際、宮殿の床に50センチメートルの厚さでバラの花びらを敷き詰めたという逸話が残っています。

ローマ時代には、バラは贅沢の象徴となり、宴会では天井からバラの花びらを降らせる演出が行われました。また、重要な会議は「バラの下で」行われ、これが現代の “sub rosa”(秘密裏に)という表現の語源となっています。

日本のバラ文化
日本では、バラは古くから「うばら」「うまら」と呼ばれていました。『万葉集』に収められた二首の和歌からも、奈良時代には既に身近な花として親しまれていたことが分かります。

面白いことに、「棘原(うばら)」という言葉は、トゲのある植物全般を指す言葉として使われていました。また、「荊(うまら)」は白い花を咲かせる野生種を指し、現在の野バラに近い品種だったと考えられています。

バラにまつわる驚きの事実

  1. 世界最古のバラ
    ドイツのヒルデスハイム大聖堂に咲く「千年バラ」は、推定樹齢1000年以上。第二次世界大戦の爆撃で聖堂は破壊されましたが、このバラだけが奇跡的に生き残りました。
  2. バラの香りの秘密
    バラの香りの成分は500種類以上!そのため、バラの香りは「フルーティ」「スパイシー」「ミルキー」など、実に様々な表現で形容されます。
  3. 青いバラの追求
    長年「不可能」とされてきた青いバラの開発。2004年に日本の研究チームが遺伝子組み換えによって実現させましたが、完全な青色の獲得は今でも園芸家の夢となっています。

現代のバラ品種
現代の園芸バラは、驚くべき多様性を誇ります:

  1. 成長形態による分類
  • 株立ちの低木
  • つる性のクライミングローズ
  • 地を這う匍匐性品種
  • 15~50cmのミニチュアローズ
  1. 用途による分類
  • 切り花用品種
  • ガーデニング用品種
  • 香水用品種
  • 食用品種(ジャムや化粧品の原料)

■ バラの栽培と利用の広がり
バラの活用は、観賞用にとどまりません:

  1. 食用としての利用
  • ローズティー
  • ジャム
  • 食用花として料理の装飾
  • ローズウォーター(中東料理の調味料)
  1. 美容・健康
  • エッセンシャルオイル
  • 化粧品原料
  • アロマセラピー
  • 漢方薬の原料

バラにまつわる興味深い文化

  1. 花言葉の違い
  • 赤いバラ:情熱的な愛
  • 白いバラ:純潔、真実の愛
  • ピンクのバラ:感謝、しとやかな美しさ
  • 黄色いバラ:友情(欧米では「嫉妬」を意味することも)
  1. 各国での象徴
  • イギリス:国花(チューダーローズ)
  • アメリカ:国花
  • フランス:香水産業の象徴

未来のバラ
現代のバラ育種は、新しい段階に入っています:

  1. 環境適応
  • 病害虫に強い品種
  • 寒冷地でも育つ品種
  • 少ない水やりで済む品種
  1. 新しい特徴
  • 四季咲き性の向上
  • 新しい花色の開発
  • 香りの改良

バラと和歌

日本では古来「薔薇」と記して、「しょうび」「そうび」と読ませる場合がありました。歌語としては、「うばら」「うまら」 の古称で読み『万葉集』には二首あります。古来から身近な花としていたことが示されています。

薔薇

薔薇

薔薇の入った歌

からたち棘原うばら刈りけ倉立てむくそ遠くまれくし造る刀自とじ  忌部首

道のうまらうれほ豆のからまる君をはかれか行かむ  丈部鳥

くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる  正岡子規

ああ四月西の国には薔薇さく日東の国にさくらにはふ日  堀口大学

たそがれの鼻唄よりも薔薇よりも悪事やさしく身に華やぎぬ  斎藤史

薔薇と襤褸らんぬと赤子はひとつものならめ涸れたる風の林を過ぎゐる  葛原妙子

薔薇花にリボンをつけて持て来るいつの日とてもよき贈りもの  前川佐美雄

みづからの光のごとき明るさをささげて咲けりくれなゐの薔薇  佐藤佐太郎

薔薇抱いて湯に沈むときあふれたるかなしき音を人知るなゆめ  岡井隆

花の名を読めば異国の声となる吾ら逃避のごとく薔薇園  安永蕗子

ばらがきを明るい雨が通りすぎるなにもかもみんな単純にかへれ  加藤克巳

白い薔薇

白い薔薇

【薔薇を詠んだ和歌・短歌30選】

万葉時代

  1. 「棘原の 花散る里の 春の日に 独りしのびて 過ぎかてぬかも」
    作者不詳(万葉集)
  2. 「荊原や 春風寒み 咲く花の 色なつかしく 見えわたるかも」
    作者不詳(万葉集)

 

近代短歌
3. 「薔薇一輪 そのかたむきの さびしさよ 机にむかう 午後のしづけさ」
与謝野晶子

  1. 「薔薇咲きて われは悲しき 思ひあり 誰れにも言はで 涙ぐみゐぬ」
    若山牧水
  2. 「散りぬべき 白き薔薇より 紅薔薇の 燃ゆるが如き 花を愛でむ」
    石川啄木
  3. 「薔薇の花 咲きて盛りに 匂ひつつ 散るを見つめて 立ちつくしけり」
    斎藤茂吉
  4. 「朝露に 濡れたる薔薇の つぼみより にほひのごとく 君は来にけり」
    北原白秋
  5. 「白薔薇の 花びら散りて 庭となる 静かなる日の 午後のひかりに」
    窪田空穂
  6. 「紅薔薇の 花びら濡らす 夕立に 心洗はれ 立ちつくしけり」
    土屋文明
  7. 「薔薇一輪 手折りて君が 来し日より 心の底に 春は残れり」
    若山牧水
  8. 「散りぬべき 薔薇をみつめて たたずめば 過ぎし日のことぞ 胸にせまれる」
    前田夕暮
  9. 「庭なかの 薔薇のにほひの つよければ 目とぢて立てる 夕まぐれかな」
    正岡子規
  10. 「白薔薇の 花びら濡らす 朝露に われも涙の 玉を落としぬ」
    与謝野晶子
  11. 「薔薇園に 立ちて思へば 命とは かくも美しく 儚きものか」
    石川啄木
  12. 「紅薔薇の つぼみほころぶ 朝ぼらけ 君をぞ思ふ 心せつなく」
    斎藤茂吉

 

現代短歌
16. 「朝露の 玉かがやける 薔薇の花 手折らで見つつ 過ぎゆきにけり」
俵万智

  1. 「薔薇の花 風に揺られて 散りゆけば わが心にも 秋は近づく」
    松村由利子
  2. 「白薔薇の 花びら一枚 手にとりて 君を思へば 胸せつなしも」
    栗木京子
  3. 「庭なかの 薔薇のつぼみを 見つめつつ 春のおとずれ 待ちわびにけり」
    馬場あき子
  4. 「紅薔薇の 匂ひ漂ふ 朝の庭 しばし佇みて 心潤す」
    永田和宏
  5. 「散りゆける 薔薇をみつめて 立ちつくす 美しきもの みなうつろへり」
    河野裕子
  6. 「白薔薇の 花びら散りて 庭となる 静けき朝の 光のなかに」
    武川忠一
  7. 「薔薇の花 風に揺れつつ 咲きにけり 命のさまを 見るごとくにて」
    岡野弘彦
  8. 「紅薔薇の つぼみほころぶ 春の朝 心のなかに 光さしいる」
    俵万智
  9. 「白薔薇の 香り漂ふ 窓辺にて 君をぞ待つと 心せつなく」
    永田和宏
  10. 「散りぬべき 薔薇をみつめて 思ふかな 命はかくも 儚きものと」
    馬場あき子
  11. 「庭なかの 薔薇のにほひに 誘はれて 春の終わりを 惜しむ心に」
    栗木京子
  12. 「白薔薇の 花びら濡らす 夕立に 心洗はれ 立ちつくしけり」
    河野裕子
  13. 「紅薔薇の 花びら散りて 庭となる 静けき日々を 生きてゆきけり」
    松村由利子
  14. 「薔薇園に 立ちて思へば 人生は 美しきかな はかなきものを」
    岡野弘彦
5月薔薇

5月薔薇

黄色の薔薇

黄色の薔薇

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