【花山 多佳子】『5選』知っておきたい古典~現代短歌!

エリシマム

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花山 多佳子 (はなやま たかこ)

『歌心と知性が織りなす現代短歌の世界 – 歌人 花山多佳子の軌跡』

1948年、知的文化の息づく東京都武蔵野市に生を受けた花山多佳子は、日本の現代短歌界において独自の存在感を放つ歌人として知られています。同志社大学文学部在学中に京都大学短歌会と「塔」に所属し、著名な歌人・高安国世に師事したことが、その後の歌風形成に大きな影響を与えることとなりました。

花山の短歌の特徴は、イデオロギーや特定の思想に囚われることなく、日常生活や現実を鋭い観察眼で捉え、知的なリアリズムとして昇華させる点にあります。特に、1970年代以降の女性歌人の中では、フェミニズムの潮流に安易に同調することなく、独自の視点で女性の生活と内面を描き出してきました。

その創作姿勢は、現代短歌における一つの範を示すものとして高く評価されています。批評意識に優れた花山は、短歌を単なる心情の吐露の場としてではなく、現代社会を映し出す知的な表現媒体として捉えています。生活の中に潜む真実を、31文字という限られた字数の中で鮮やかに切り取る手腕は、多くの後進の歌人たちに影響を与えています。

歌壇における花山の立ち位置は、伝統と革新の狭間で独自の境地を開拓した歌人として特筆されます。現代短歌の潮流において、過度に実験的になることを避けながらも、常に新鮮な視点と表現を追求し続けてきました。その姿勢は、短歌という伝統的な文学形式を現代に生きる表現として維持発展させることに貢献しています。

選者としての花山は、若手歌人の育成にも力を注いでいます。その選評は、作品の本質を鋭く指摘しながらも、創作者の個性を尊重する姿勢で知られています。特に、形式や技巧に囚われすぎることなく、歌に込められた真摯な思いと表現の可能性を見出す眼力は、多くの歌人から信頼を集めています。

現代社会における短歌の意義を常に問い続ける花山の姿勢は、文学としての短歌の可能性を広げることに寄与しています。政治や社会問題を扱う際も、イデオロギーの陥穽に陥ることなく、個人の視点から現実を見つめ、普遍的な真実を掬い取ろうとする姿勢は、現代短歌における一つの指針となっています。

花山の代表作には、日常生活の細部から人生の真実を掬い取った作品が多く見られます。それらは、現代を生きる人々の喜びや苦悩、希望や絶望を、知的な洞察力と繊細な感性で描き出しています。その作品群は、現代短歌の重要な到達点として評価されています。

近年は、選者として後進の育成に力を注ぐ一方で、自身の創作活動も精力的に続けています。その作品は、年を重ねるごとに深みを増し、現代社会に対するより本質的な洞察を含むものとなっています。

花山多佳子の存在は、現代短歌における「知的なリアリズム」の一つの到達点を示すとともに、これからの短歌の可能性を示唆するものとして、重要な意味を持っています。伝統的な和歌の精神を継承しながらも、現代的な視点と表現を追求する姿勢は、日本の詩歌の未来を考える上で示唆に富むものといえるでしょう。

今日も花山は、短歌を通じて現代社会の真実を捉えようとする努力を続けています。その創作と批評の営みは、現代短歌の重要な一角を形成し続けているのです。

花山多佳子 著作

1978年 歌集『樹の下の椅子』  橘書房

1985年 歌集『楕円の実』  ながらみ書房

1989年 歌集『砂鉄の光』  沖積舎

1991年 歌集『おいらん草』  沖積舎

1993年 歌集『草舟』  花神社

1998年 歌集『空合』  ながらみ書房

2000年『花山多佳子歌集』  砂子屋書房

2002年 歌集『春疾風』  砂子屋書房

2006年 歌集『木香薔薇』  砂子屋書房

2007年 『続花山多佳子歌集』 砂子屋書房

2011年 歌集『胡瓜草』 砂子屋書房

2012年 歌集『木立ダリア』 本阿弥書店

2015年 『森岡貞香の秀歌』 砂子屋書房

2016年 歌集『晴れ・風あり』 短歌研究社

2017年 『続続花山多佳子歌集』 砂子屋書房

2019年 歌集『鳥影』 角川文化振興財団

〈参考: フリー百科事典〉

花山多佳子 短歌

そのうちに旅立つことを知らしめよ波打つ巨き樹の下の椅子 『樹の下の椅子』

子を抱きて穴より出でし縄文の人のごとくにあたりまぶしき 『楕円の実』

ああかくも物の如くに犀は立ち疾走の衝動を踏んでいるのか 『砂鉄の光』

制服のスカート上げて河の中ゆく少女らは楽符のごとし 『草舟』

ビデオこわれ洗面台割れ冷蔵庫奇怪にわめき夏休み終る 『空合』

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