秋山 佐和子(あきやま さわこ)
1947年山梨県生まれの歌人。
國學院大學文学部文学科を1970年に卒業後、現代短歌界の重鎮である岡野弘彦に師事し、1974年には彼が主宰する短歌会『人』に入会。彼女の活動は、短歌創作だけでなく、文学評論や研究にもおよび、特に近代日本文学とフェミニズムに関連する分野での業績が高く評価されています。
山梨県東山梨郡後屋敷村(現山梨市)の出身で、旧姓は堀内です。山梨英和中学校・高等学校を経て、國學院大學文学部へ進学し、卒業後は日本語教師として働きながら、短歌活動を続けました。1974年に『人』短歌会に入会し、1985年には評論「応答に抑揚ひくき日本語よ – 宮柊二の歌とともに」で第3回現代短歌評論賞次席を受賞するなど、若い頃から才能を発揮していました。
彼女の評論活動は、特にフェミニズムの視点を取り入れた短歌研究が中心となり、1990年には「フェミニズムを体現した歌人たち」というテーマで研究発表を行いました。この発表は、女性歌人たちの声を再評価するもので、特に三ヶ島葭子(みかじま よしこ)をはじめとする「青鞜」に関連した女性運動に焦点を当てたものでした。以降、秋山は女性歌人たちの作品を研究対象とし、女性の視点を重視した短歌評論を展開していきます。
1993年に『人』が解散すると、秋山は藤井常世が主宰する短歌会「笛」に参加し、その後も短歌活動を続けました。さらに、2002年には自身が主宰する「玉ゆらの会」を結成し、2003年には歌集『玉ゆら』を創刊しました。この歌集は、彼女が短歌活動の集大成として位置づけるものであり、多くの歌人たちに影響を与えています。
評論家としての活動も評価されており、2003年には『歌ひつくさばゆるされむかも 歌人三ヶ島葭子の生涯』で第1回日本歌人クラブ評論賞を受賞しました。この作品は、三ヶ島葭子の生涯と彼女の短歌を通じて、日本の女性文学史に新たな視点を提供するもので、秋山の文学研究における重要な業績のひとつとなっています。
さらに、2012年には「青鞜」に関わった歌人である原阿佐緒(はら あさお)と三ヶ島葭子に関する研究で第8回平塚らいてう賞を受賞しました。平塚らいてうは、女性解放運動の先駆者として知られており、秋山の研究は、その思想を引き継ぐ形で女性歌人たちの活躍を評価し、現代文学におけるフェミニズム運動の重要性を再認識させるものでした。
秋山佐和子の活動は、日本の伝統的な短歌を基盤としながらも、女性の視点やフェミニズム思想を取り入れた革新性が特徴です。彼女の短歌と評論は、現代短歌界においても重要な位置を占めており、今後もその影響は続くことでしょう。また、日本文藝家協会や現代歌人協会、日本歌人クラブ中央幹事としての活動を通じて、次世代の歌人たちにも大きな影響を与えています。
秋山佐和子 歌集
1986年 歌集『空に響る樹々』 砂子屋書房
- 1993年 歌集『晩夏の記』 砂子屋書房
2000年 秋山佐和子歌集『羊皮紙の花』 砂子屋書房
2005年 秋山佐和子歌集『彩雲』 砂子屋書房
2008年 秋山佐和子歌集『半夏生』 砂子屋書房
2013年 秋山佐和子歌集『星辰』 砂子屋書房
秋山佐和子 短歌
アウシュヴィッツに曳かれゆきたる汝が民を語らず別れき雪つもる夜半 『空に響る樹々』より
やはらかに大気の動く気配して雨後の夕べにくちなし匂ふ 『晩夏の記』
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