石原吉郎 (いしはらよしろう)
1915~1977年 静岡県出身。詩人、歌人。
東京市目黒の攻玉社中学校卒業。その年の1934年に東京外国語学校 (後の東京外国語大学) へ入学。1938年、石原は東京外国語学校ドイツ部を卒業。大阪ガスに就職。
石原吉郎 短歌
北鎌倉扇谷の遠狭を刀もち行けど刀は叫ばず 『北鎌倉』
北鎌倉橋ある川に橋ありて橋あれば橋 橋なくば川 『北鎌倉』
飢ゑしも餓死には到る過程ならず われらはときに飢ゑにより樹つ 『北鎌倉』
鎌倉は鎌倉ならじ鎌倉の北の剛毅のいたみともせむ 『北鎌倉』
日本脱出したし 皇帝ペンギンも皇帝ペンギン飼育係も
五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤独もちてへだたる
戦争のたびに砂鉄をしたちらす暗き乳房のために祈るも
てのひらの傷いたみつつ裏切りの季節にひらく十字架の花
火を呼ぶは火にはあらずと言へる夜にあらぬ方より呼びとめらるる
死に代り死に代らずば銀杏のこれのみどりはなほ掌に在りや
十一月なんぢあがなふいちにちはひとりの死者をつひにあがなはず
革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ
血迷へる指すらありて血迷わぬ箸あることをなんぢ知れるや
夕まぐれゆふまぐれして身じろがぬものの気配を背には持たぬや
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