【卵・玉子の短歌】『8選』知っておきたい古典~現代短歌!

カラフルなたまご

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卵・玉子

鳥類の卵はその形状や色が種ごとに異なり、自然界において重要な役割を担っています。一般的に「卵」といえば鶏卵を指し、現代では「物価の優等生」として知られ、安価で栄養バランスに優れた食べ物とされています。しかし、戦前や戦後の時代には卵は非常に高価であり、特に戦後まで猛威を振るっていた結核患者にとっては、栄養価が高い食材として重宝されていました。当時、卵は割れやすいという性質があるため、もみ殻を敷いた箱に保管され、売る際には透かして見ながら腐敗を調べていました。

卵は、鳥類や爬虫類などが次世代を生み出すために産む殻に包まれた細胞です。特に鳥類の卵は硬い殻で保護され、内部には黄身(胚)と白身(卵白)が含まれており、胚の成長に必要な栄養を提供します。鳥の卵には「ケーラー」と呼ばれる重要な構造があり、卵白を取り巻き、殻と接している部分に位置しています。この薄い膜は、胚を保護しながら酸素を取り込み、内部の湿度を調整する役割を果たします。卵の殻はカルシウムで構成され、外部からの衝撃や細菌の侵入を防ぐ一方、無数の小さな穴が開いており、これがガス交換を可能にして胚の呼吸を助けています。

卵にはその形状や殻が破れて新しい生命が誕生することから、古来より深い象徴性が付与されてきました。卵は単なる鳥や虫、魚の産むものではなく、再生や復活を象徴するものと考えられていたのです。特にキリスト教の復活祭では、色を付けた卵を配る習慣がありますが、これはキリストの復活を象徴したもので、卵が持つ再生のイメージに基づいています。また、これに関連して、卵にまつわる様々な歌も古くから歌われてきました。卵は単なる食材や生命の起源を超えて、文化的・宗教的な象徴としても重要な存在です。

卵・玉子 短歌

収入なき父が病む我に金を置き卵を置きて帰り行きたり 高安国世

ひとり居て卵うでつつたぎる湯にうごく卵を見ればうれしも 斎藤茂吉

汝兄よ汝兄たまごが鳴くといふゆゑに見に行きければ卵が鳴くも 斎藤茂吉

卵ひとつありき恐怖につつまれて光冷たき小皿のなかに 前田夕暮

鮭のはらみ卵盛りたる白き皿へ情するどくなりて吾は向く 富小路禎子

胎生より孤独なる一個として白き鳥卵置かれてゐたり 斎藤史

われのベッドに坐りたくてならぬ雌鶏のしてやつたり今日は卵産みたり 斎藤史

卵産む海亀の背に飛び乗って手榴弾のピン抜けば朝焼け 穂村弘

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