【俵 万智】『30選』 知っておきたい古典~現代短歌!

ストレプトカーパス(クリスタルアイス)

ストレプトカーパス(クリスタルアイス)

俵 万智 (たわら まち)

1962年 大阪府生まれ。歌人。歌誌『心の花』所属。

早稲田大学在学中、佐佐木幸綱に出会い、作歌を始める。1985年、大学卒業後、国語教員として働きながら発表した『野球ゲーム』で第31回角川短歌賞次席。翌1986年、『八月の朝』で第32回角川短歌賞を受賞。

1987年、口語や現代の風俗を多く取り入れて、 若い女性の恋を軽やかに詠った第一歌集 『サラダ記念日』が大ベストセラーとなる。(現代歌人協会賞を受賞)

定型律にきちんと納まる親しみやすい歌風は、多くの人々の心を掴んだ。俵の口語文体は、若い女性に限らず、幅広い年代に影響を与えた。また、短歌に無縁な層にも短歌への関心を呼び起こした。

 

俵 万智 歌集

  • 1987年 第一歌集『サラダ記念日』河出書房新社
  • 1987年 『とれたての短歌です』浅井慎平写真 角川書店
  • 1989年 『もうひとつの恋』浅井慎平写真 角川書店
  • 1991年 第二歌集『かぜのてのひら』河出書房新社
  • 1997年 第三歌集『チョコレート革命』河出書房新社
  • 1996年 『小さな友だち』管洋志写真  講談社
  • 1997年 『花束のように抱かれてみたく』稲越功一写真 同朋舎  のち角川文庫
  • 1998年 『そこまでの空 俵万智の贈りもの』安野光雅絵 河出書房新社
  • 2003年 『恋文』荒木とよひさ共著 主婦と生活社 のち中公文庫
  • 2005年 『会うまでの時間 自選歌集』文藝春秋
  • 2005年 第四歌集『プーさんの鼻』文藝春秋 のち文庫
  • 2010年 『たんぽぽの日々 俵万智の子育て歌集』市橋織江写真 小学館
  • 2010年 『生まれてバンザイ』童話屋
  • 2012年 『あれから 俵万智3・11短歌集』今人舎
  • 2012年 『風が笑えば』奥宮誠次写真 中央公論新社
  • 2013年 第五歌集『オレがマリオ』文藝春秋
  • 2020年 第六歌集『未来のサイズ』角川文化振興財団

〈参考 フリー百科事典〉

俵 万智 短歌

愛人でいいのとうたう歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う 『サラダ記念日』

愛持たぬ一つの言葉 愛を告げる幾十の言 葉より気にかかる

行くのかと言わずにいなくなるのかと家を出る日に父が呟く

大きければいよいよ豊かなる気分東急ハン ズの買物袋

落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し

思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サ ンダル、あじさいの花

思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ

教室にそれぞれの時充たしおる九十二個の目玉と私

午後四時に八百屋の前で献立を考えているような幸せ

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答え る人のいるあたたかさ

捨てるかもしれぬ写真を何枚も真面目に撮っている九十九里

砂浜に二人で埋めた飛行機の折れた翼を忘れないでね

生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る 

ハンバーガーショップの席を立ち上がるように男を捨ててしまおう

紫陽花

紫陽花

陽のあたる壁にもたれて座りおり平行線のと君の足

「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君

向きあいて無言の我ら砂浜にせんこう花火ぽとりと落ちぬ

ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底みなぞこの石

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの

吾をさらいェンジンかけた八月の朝をあなたは覚えているか

二週間先の約束嬉しくてそれまで会えないことを忘れる  『とれたての短歌です。』

社会との鎖をほどくように脱ぐ背広、ネク タイ、ズボン、ワイシャツ 『かぜのてのひら』

母と娘のあやとり続くを見ておりぬ「川」から「川」へめぐるやさしさ

不用意に捨ててはならぬ燃やしても恋は大地にかえらないから

幾千の種子の眠りを覚まされて発芽してゆく我の肉体 『チョコレート革命』

ガンジスは動詞の川ぞ歯を磨く体を洗う洗濯をする

地図になきスラムの名前 煙なす「スモーキーマウンテン」塵芥の山

濃紺の車すべらせ逢いにくる海より蒼い時間を連れて

別れ話を抱えて君に会いにゆくこんな日も吾は「晴れ女」なり

コメント