近藤 芳美(こんどう よしみ)
1913~2006年 朝鮮生まれ。歌人、建築家。本名:近藤 芽美(こんどう よしみ)
戦後派歌人の旗手であり、第二次世界大戦後の歌壇に新しい理念を問い、それを牽引する歌人として活動した。
中村憲吉のち土屋文明に師事。1947年、加藤克巳らと新歌人集団を結成。1951 年 「アララギ」の若手とともに歌誌「未来」を創刊した。1955年「朝日歌壇」選者となり、投稿歌壇を「無名者の歌」と位置づけた。
生き行くは楽しと歌ひ去りながら幕下りたれば湧く涙かも 『埃吹く街』
いつの間に夜の省線にはられたる軍のガリ版を青年が剥ぐ
水銀の如き光に海見えてレインコートを着る部屋の中
ゼネストを罵る事も諦めてうづくまり朝の改札を待つ
漠然と恐怖の彼方にあるものを或いは素直に未来とも言ふ
守り得し彼らの理論清しきに吾が寝ねられぬ幾年ぶりぞ
夕ぐれは埃の如く立つ霧に駅より駅に歩む労働者
世をあげし思想の中にまもり来て今こそ戦争を憎む心よ
あらはなるうなじに流れ雪ふればささやき告ぐる妹の如しと 『早春歌』
レコードの一つひそかに割れて居き音なき雨の止む夜半のころ『冬の銀河』
ナチスを責むる生徒らの前常に静かに答えせざりきドーナード講師
吾らならば何をなし得しソ連戦車過ぐる冬日の敷石の影
シュプレヒコールわけておくれて来し一人立ちつつ逡巡の告白つづく 『黒豹』
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