坂井 修一(さかい しゅういち)
1958年~ 愛媛県出身。歌人、情報理工学者、東京大学教授。
「かりん」に所属。科学者としての精神性と人間的な感覚・情熱 を交差させ、男歌としての風格に溢れている。
歌集に『ラビュリントスの日々』『群青層』『スピリチュアル』 評論集に『鑑賞現代短歌・塚本邦雄』など。
水族館にタカアシガニを見てゐしはいつか誰かの子を生む器 『ラビュリントスの日々』
アポロンやその弓よりも弦よりもはげしく撓ふ夜々の草花
落ちよとぞ眼さだめてわが見るも夏大凧は動かざりけり
肩抱けば崩るるやうに散るやうに罠を仕掛けるやうに黙りをる
霧島はひかりの花を落すとぞひた落すとぞさらばファウスト
二つ三つかみそりの傷ほの紅きわれはしづかな破戒僧なり
日にせまる一山の雨直なれば父は王将を動かしはじむ
言ふかひもなきなまぬるき風なれど尾長したたる碧とばすかな 『群青層』
横文字の目にみだるるは捨てておけ ああTOKIOなる和語のたそがれ
椀すする囚人の絵にちかよりて命うすしもわが鼻の影
誰が言ひし蜜よりくらき壮年や狂ひがたきはひそかに狂ふ『スピリチュアル』
せまりきてなぎたふす間のあでやかなさびしさよああ木枯しの尖 『ジャックの種子』
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